「ラーメンは非常にデリケートな食べ物で、(新横浜ラーメン博物館に)各地から出店いただくんですが、味が変わってしまうんです。同じレシピで同じ材料なのに味が違う。その原因の大半が水です。また、鍋や厨房設備によっても変わります。厨房設備は気圧などの環境や火力によって、新しい鍋はなじむまで味の変化が大きく出ます」(岩岡氏)

 微妙なものなのだ。麺も輸送で時間がたつと味が変わるというので、ラーメン博物館では製麺室まで作ることになった。奥が深いのだ。

「札幌にみそラーメンを調べに行ったのに、みそラーメンを看板としたお店が少なく、札幌に限らず、全国的に味の均一化が進んでいます」(岩岡氏)

 ラーメンは自然発生的に誕生した、いわば郷土料理。地域の気候・風土・食文化によって生まれたご当地ラーメンは、情報化と相まって全国的に流行している味に均一化され始めている。そのすき間を海外からローカライズされた各国のラーメンが埋めていくのかもしれない。

創業100年の製麺メーカーが
考える未来のラーメン

 製麺業者の老舗、大成食品の鳥居憲夫社長は3代目。創業者である祖父が大正時代にラーメンの屋台を引き、仲間に麺を卸し始めたのが現在の製麺業の始まりなのだそうだ。

「戦後は10年ごとにラーメンブームがありました。最初は札幌みそラーメン、その後はつけ麺、ご当地ラーメンが来て、1990年前後がラーメンブームの最高潮だったと思います。多くのラーメンコンサルタントや評論家が登場したのもこの頃です。そして2000年代に入って海外に進出する企業が増え、2010年代には和食が世界遺産になったこともあり、海外でも人気が高まりました」(鳥居氏)

 インスタントラーメンのように、これからは日本のラーメンが世界に広がっていく。

 そうした中、鳥居氏の考えるラーメンはフレンチなどの西洋料理の技法と和食の技法が組み合わさった新しい味だ。