「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)

コロナ リモート
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価値を価格より優先させる

重要なのは、「価値」→「価格」の順番で考えるということです。

そうしないと、「価値」が「価格」に引っ張られてしまうのです。欲しいモノがある時、よっぽど意識しない限り最初に目に飛び込んでくるのは「価格」です。それが予想より安ければ、本当に必要なモノか、本当に大事なモノかどうかにかかわらず、「これは安いな!」と飛びついてしまうものです。

この間違いは、モノを買う時ばかりではありません。5000円のバッグを持って歩いている人よりも、10万円のバッグを持ち歩いている人の方が、立派な人だと錯覚してしまいがちです。でも人の本当の価値は、「高いモノ」を持っているかどうかで決まるわけがありません。

これでは他人が決めた「価格」の奴隷になっているのと同じです。そうならないためには、「価格」より前にまず「価値」について判断する必要があるのです。値札(価格)を見る前に、自分が受け取ることのできる価値(=機能的効用+意味的効用)について、自分自身でしっかり考えなければなりません。そして、その価値は、お金を払った瞬間に受け取れるものでなくても良いと思います。

実際、私は20代だった時、相当の時間とお金をつぎ込んで英語をマスターしようとしました。それでも大して上達しなかったのですが、あの若かりし頃に使った時間とお金は、決して無駄ではなかったと今にして思います。

20代の私にとって英語の勉強に費やしたお金と時間は、かなり負担の重いものではありましたが、自分の価値観に合ったものだったということです。なぜなら英語を学んだことでその後の海外赴任が可能になり、そこでマスター(修士号)を取得することができました。だから勤めていた銀行が潰れても、職にあぶれることはなかったのです。

このように数年後になって実を結ぶ可能性のあるものに今から資金や時間を投じる行為のことを、広い意味での「投資」と言います。私が20代で時間とお金を「英語習得」に投下したことは、「投資」だったということです。

「価値」がわかる人は幸福になれる

自分自身の価値の尺度があれば、どんなに魅力的な車であれ、宝飾品であれ、スルーすることができます。逆にどんなに苦しい仕事や勉強だったとしても、自分の価値観に合致していれば我慢できます。

私は、この自分自身の価値観を作ること、価値について本当に理解することこそが、人に左右されない自分の本当の姿の理解、真の意味での自信につながると思います。自信がなくていつも人の意見を気にしている人は、能力がないのではなくて、「自分はこれだ」という自身への理解が足りないだけなのだと考えます。

裏をかえせば、この「価値」というものを見極めて、人に対して「価値」を生み続ければ、結果として皆さんは相当の確率でお金持ちになれます。「相当の確率で」と言ったのは、その価値に対してお金がついてくるかどうか、成功できるかどうかには、「運」の要素もあるからです。

でもそのような確固とした「価値観」を身に付けることができれば、最低でも幸福になることができるでしょう。なぜなら、本当の意味で親、教師、会社、国など自分以外のあらゆるものから、金銭的にも精神的にも自立することができるからです。

世界的に有名な投資家のウォーレン・バフェット氏は、幸福と成功について、こんなことを言っています。

「成功とは良いと思うものを得ること、幸福とは得るものを良いと思うこと」

「そんなことを言っても世の中、やっぱり金じゃないか」と思っている人もいるでしょう。

でも、持っているお金が多くても、必ずしも幸福になれるとは限らないのです。実際、たくさんの報酬を得ても不幸な人はたくさんいますし、逆にそれほどお金を持っていなくても幸せに生活している人も大勢います。

「価値」と「価格」が別物であるのと同様に、「幸福」と「成功」も全く別物なのです。

参考記事
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奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。