アパホテルと東横インPhoto by Kosuke Oneda

アパホテルが2020年11月期通期決算で黒字を確保したのに対し、ライバルである東横インの21年3月期中間決算は大赤字となった。両社における出店戦略の違いが明暗を分けた。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

アパはホテル買収を有言実行
東横インは相次ぐ着工遅れ

「良い立地にあるホテルなら、どんどん買収して増やしたい。コロナ禍で厳しいから撤退したいという情報をもらえれば、有利な買い方ができる」――。

 アパホテルを運営するアパグループの元谷外志雄代表は2020年11月、ダイヤモンド編集部の取材で強気に語ってみせた。コロナ禍でホテル業界全体が急激に悪化していたにもかかわらずだ。

 そして有言実行。21年2月に「ホテルWBF新大阪スカイタワー」(大阪市、アパホテル「新大阪駅タワー」に改称)と「ホテルシンシア東京蒲田」(東京都品川区、アパホテル「京急蒲田駅前」に改称)のホテル2棟を買収した。

 新大阪駅タワーは、売り主であるホワイト・ベアーファミリーが20年6月に民事再生法の適用を申請した後、金融機関経由で買収が持ちかけられた。京急蒲田駅前は、東京都品川区のリサイクル業者が20年7月にオープンしたばかりだったが、某信託銀行経由で買収の相談があったという。

 即開業できる既存ホテルの買収は土地を購入して開発するのにかかる時間をカネで買えるし、低金利で金融機関から資金調達しやすいとして、拡大戦略の旗を降ろさない。

 アパホテルのライバルとしてよく比較されるのが東横インだ。両社は立地も客層も似通っており出店競争でしのぎを削ってきた。だがコロナ禍以降、アパホテルとは対照的に新築計画の着工遅れが発生している。

 神奈川県茅ヶ崎市で開発予定だった「仮設庁舎跡地活用事業」は、東横インが着工延期を申し出ていたことが20年8月に分かった。秋田県のJR秋田駅西口でも同年11月に着工遅れが報じられた。同年8月に着工予定だった東京都のJR八王子駅西口にある空き地についても、21年3月現在、着工した様子はない。

 コロナ禍でビジネスホテルの収支計画が見通せなくなり、金融機関から不動産としての価値を認められにくくなるなど、ホテル投資に対する融資姿勢が全体的に厳しくなった。そのため、東横インでも開発資金の調達が困難になったとみられる。

 アパホテルと東横インの置かれている状況の差は業績からも明らかで、利益面において明暗が分かれた。両社の戦略の違いがこの明暗を生んだ。