ますます現実化していく人生100年時代の働き方

 採用や雇用などについて企業の人事戦略が変わりつつあるということは、個人にとっても重要な意味を持つ。これからは「キャリアのパーソナル化」「キャリアの自立」が求められるということだ。

 それに関連して、もうひとつ忘れてはならないのが「人生100年時代」の到来だ。

「人生100年時代」というのは単なるキャッチフレーズではない。ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンらの著書『ライフシフト』によれば、2007年にアメリカやフランスで生まれた子どもの半分は、少なくとも104歳まで生きる見通しだ。日本の子どもはさらに長寿で、107歳以上まで生きる確率が50%あるという。

 これまでの人生モデルでは、生まれてから高等教育を終えるまでに約20年、社会に出て働く期間が40年、リタイアした後の余生が20年という3ステージで考えるのが一般的だった。

 しかし、実際に100年生きる時代になると、3ステージのモデルはあてはまらない。特に、少子高齢化が進むと、現在の社会保障制度を維持することが難しくなる。公的年金の給付水準が下がれば、働く期間が延びることは避けられない。

 就活をしている大学3年生は、将来、働く期間が40年ではなく60年くらいまで延びる確率が高いのではないだろうか。

 こうした流れをどう受け止めるか。悲観的に捉えるのはたやすいが、むしろ、自分の能力やスキルを積み上げ、成長を続けるチャンスと捉えてみてはどうだろうか。実際、仕事などを通じて社会との関わりを続ける高齢者のほうが、肉体的にも精神的にも健康を維持しやすいといわれている。

 ただ、長く働くには、特定の分野や職種での経験とスキルを磨き、雇用される能力=「エンプロイアビリティ(Employability)」を高める必要がある。

 そう考えれば、就活はその後の長いキャリアの入り口に過ぎない。キャリアを山登りに例えれば、目指すべき頂上は一人ひとり異なり、その道のりは長い。頂上へ至るルートをひとつに限る必要はなく、途中でルートを替えたり、いったん休んだりすることもありえる。

 厚生労働省のデータでは、2016年3月卒業者(大卒)で、3年以内の離職率は32.0%、3人に1人に達する。今後は離職率の高い低いではなく、「何のために就職後3年以内に離職するのか」という中身が重要になる。また、それゆえ、就活での判断と選択が問われることになるだろう。大学や社会人として20代で身に付けた能力やスキルが、一生通用する時代ではない。30代40代で学び直し、そこでまた新たなキャリアの舞台に挑戦することも普通になっていく。

 100年の人生を見据え、どのようなキャリアを組み立てるのか、どのような働き方をするのか――そうしたことを学生だけではなく、社会人も含めて一人ひとりが考える時代がきている。

コロナ就活の重要キーワードは「ジョブ型雇用」と「人生100年時代」「息子・娘を入れたい会社2021」から転載