運転資本が増加したら、その増えた金額だけ現金は減る

林教授 では、間接法を使って説明したらどうだろう。

カノン 商品や売掛金が増えて運転資本が増加したら、その増えた金額だけ現金は減ってしまいます。

林教授 その通り。逆に買掛金が増えれば、その金額だけ運転資本が節約できるから会社の現金を使う必要がなくなる。

カノン 仕入先のお金を借用して商売に使っているようなものですね。

林教授 その通り。だから買掛金が多いことは会社の経営に有利に働く、と言いたいところだが、それには条件がある。利益が出ていること、そして売上代金が順調に回収されていることだ。この条件が揃えば、仕入先の資金(借入金)を使って運転資本を気にせずに商売ができる。会社にとってこんなうまい話はない。

カノン 赤字だったり、売上代金の回収が遅れる場合はどうなりますか?

林教授 赤字ということは会社の価値が減るということだ。赤字が続けば会社の体力は消耗する。それから売上代金の回収が遅れれば、買掛金が払えなくなる。支払い期日までに払えないと、不渡り(手形の満期日に所持人が銀行で小切手や手形代金の支払いを拒絶されること)が起きて銀行との取引ができなくなる。最悪の場合、会社は立ち行かなくなる。

カノン そうなんですか? でも、買掛金って借金ですよね。お金に余裕があれば、支払えばいいと思いますけど。

林教授 買掛金は運転資本を減らす働きがある、という話はしたね。他社のお金で商売できるのに、わざわざそんなうまい話を放棄するのでは経営者は務まらない。

カノン 確かに。うちの経理部長なんて、月末になると不機嫌になるんです。ここだけの話ですけど、仕入先に支払期限を延ばしてもらえないかって、電話することもあるんです。