コロナ禍で多くの観光産業と同様に大打撃を受けているのがスノーリゾート業界だ。そんな状況下において新潟県南魚沼市の老舗スキー場が、ある新施設をオープンした。そこに至るまでのストーリーには、コロナ禍が終息した後のインバウンド(訪日外国人観光)需要と日本の観光業界がいかに付き合っていくべきかの学びが詰まっている。その理由をお伝えしたい。(iNTO代表取締役/ブランディングプロデューサー 小松崎友子)
降雪に恵まれたスノーリゾートを襲った
緊急事態宣言の再発令と2週間延長
「緊急事態宣言が明けてからの3週間。そこしかない」――
新型コロナウイルスの感染拡大第3波によって多くの観光事業者が打撃を受けているが、その中でも特に深刻な状況にある事業者の一つがスノーリゾートだといえる。スノーシーズンがスタートした直後の1月7日に緊急事態宣言が発令され、解除される3月7日までの2カ月間は実質「営業停止」状態を余儀なくされた。
一方で、記録的な暖冬で雪不足に見舞われた去年と異なり、今年はその2カ月間で多くの降雪に恵まれた。「3月末までの3週間はリゾートをオープンできる」と、緊急事態宣言明けを待ち望んでいた関係者が多かったのではないだろうか。そんな中、首都圏1都3県に対する緊急事態宣言の2週間延期が決定。がっくりと肩を落とす関係者の姿が目に浮かぶ。
日本には豊富な雪資源がある。この狭い国土に世界で2番目に多くのスキー場を抱えており、日本のパウダースノーは世界的にも非常に評価が高い。しかしながらスキー人口は1990年後半以降、年々減少している。さらに追い打ちをかけるように昨年は雪不足、今年は雪に恵まれながらもスキー場がオープンした直後に緊急事態宣言が発令された。今シーズンは完全にオープンしないスキー場もあり、経営が立ち行かなくなってきているところもある。
そんな状況の中、筆者がコンサルタントとして支援に携わっている新潟県南魚沼市の老舗スノーリゾートである石打丸山スキー場は、今シーズンに新しい施設「スノーガーデン」をオープンさせた。そこには、同スキー場営業企画部チームのスノーリゾート業界を何とかしたいという思いと確固たる勝算があった。