誘導質問術はなぜ機能するか
狙われる人間の「6つの脆弱性」

 こうした事例を見ると、なぜこんな誘導質問に多くの人がだまされるのかと疑問に思う人もいることだろう。それにもかかわらず、誘導質問術はどうして有効に機能するのか。

 社会心理学者 ロバート・チャルディーニは、『影響力の武器』[3]で、「人間は六つの脆弱性があり、これにより相手から承諾や情報などを簡単に得られる」と語る。チャルディーニは、その脆弱性とは以下の6つであるとしている。

(1)返報性
 人から親切や贈り物等を受けると「お返し」をする特性で、日本のお中元やお歳暮はその典型であろう。

(2)コミットメントと一貫性
 自分のとった行動が、その後の行動に一定の拘束をもたらすこと。以下、三つの手法がある。

・ローボールテクニック
 最初にある事柄を決めるが、後にそれが実現不可能であることを示され、最初の決定より高度な要求を受け入れる。
例:バーゲンの目玉商品があり、その購入に、「それは既に売り切れで、少し高価だが同じような商品がある」と言われ、高額な商品を購入してしまう。

・ドア・イン・ザ・フェイス テクニック
 最初に実現不可能な要求を行い、相手が対応できない状況に追い込み、最初の要求より負担の軽い要求をし、実現させる。

・フット・イン・ザ・ドア テクニック
 誰も断らないごく軽い依頼を行い、承諾後、より重い要求の承諾を得る。
例:最初に簡単な署名を依頼し、その後、より時間のかかる調査を依頼する。

(3)社会的証明
 他人の考えにより、自分が正しいかどうか判断する特性。

(4)好意
 好意を持っている人からの依頼は、承諾する特性。

(5)権威
 企業・組織の上司など、権威を持つ者の命令に従う特性。

(6)希少性
 入手し難い物ほど貴重に思え、入手したくなる特性。