金融業界が固唾をのんでその動向を見守る企業がある。多くの地銀が無担保融資を突っ込んでいる、ユニゾホールディングス(HD)だ。もしユニゾHDが経営危機にひんすれば、地銀は業績悪化や赤字転落を避けられず、大再編の引き金にもなり得る。特集『地銀転落 メガ銀終焉 銀行複合危機』(全10回)の#1では、ユニゾHDの経営不安が地銀に与える影響を探った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
安心の「みずほ銘柄」が爆弾に
ユニゾの行く末を地銀が警戒
「この企業とお付き合いしませんか」。今から数年前のこと。ある地方銀行の融資担当幹部の元に、みずほ銀行の金融法人部長が訪れた。
銀行の金融法人部は、他の金融機関向けの営業窓口だ。そこの部長が地方にまで足を運んで紹介したのが、不動産会社であるユニゾホールディングス(HD)だった。ユニゾHDはみずほ銀の前身の一つである旧日本興業銀行系列の不動産会社であり、当然ながらみずほ銀がメインバンクを務めていた。
お付き合い、つまり融資をしませんかというみずほ銀の打診は、地銀にとって“渡りに船”の話だった。金融庁の要請に基づき、保証や担保に頼らずに企業の将来性を見極める「事業性評価融資」の実行が、業界の課題だったことが背景にある。
その地銀では、事業性評価の実績を作れるという考えが働き、なおかつ「みずほの信用で貸すから問題ないだろう」という安心感もあったため、ユニゾHDに対して運転資金を、焦げ付くリスクの高い無担保のまま億円単位でつぎ込むことを決めた。
「当時、ユニゾHDと取引する銀行は10行程度だった」(冒頭の幹部)といい、後述するように、同様の経緯でユニゾHDとの取引を開始した地銀も多いとみられる。幾つかの地銀は、時間をかけて融資残高を積み増していった。
ところが、だ。そこから数年の年月が過ぎ去り、優良案件だったユニゾHDが地銀にとって真逆の存在に成り代わってしまっている。ある地銀幹部は声を潜めてこう話す。「弱小地銀が倒れる危険性だってある。まさに爆弾だ」――。