――茶葉設計技師として一坪茶園の日本茶の開発で苦労したのはどういう点ですか?

永井 一番苦労したのは、脇がこだわった「水出しでおいしいお茶」の設計です。

 脇が言うように、水出しのお茶は確かにおいしいんです。熱湯でお茶を淹れると苦味や渋味の成分が出やすく、低温の水出しであればうま味の方が出やすい。

 ですが、それまではホットで飲むとおいしいお茶をずっとつくってきたので、水出しの経験がありませんでした。脇から何度もダメ出しを受けながら、水出しでおいしいお茶の設計を進めました。

 その結果、私たちが「トップ」と呼んでいる、飲んだ瞬間のインパクトが大事だと分かりました。そして、香りの余韻をいかに感じてもらえるか。なおかつ、味がしっかりある。そんなお茶が、水出しでおいしいお茶であると結論づけました。

 一坪茶園のお茶は、リーフのように一番茶を使うことで原料にこだわりながら、ペットボトル緑茶を作るときのようにさまざまな茶葉を使って、火入れやブレンドにも工夫を凝らして作っています。リーフとドリンク両方の良さを融合しているのが一坪茶園のお茶のアピールポイントです。

 簡単に淹れられることも重要なのですが、それでもおいしさは絶対に譲れません。だから、ペットボトル緑茶ではコストを抑えるためにあまり使わない一番茶を、私たちは使っています。

 価格については現在検討中ですが、ペットボトル緑茶と同じ値段だったら、「味も同じくらいだよね」となってしまう。驚くほどおいしいという味の対価として、例えばペットボトルの倍の価格が受け入れられるか、といったことを思案しています。

 茶農家さんへの利益還元というテーマも一坪茶園の活動における問題意識の一つなので、それとお客さんから受け入れられる価格帯のバランスを考えていくつもりです。

 誰でも簡単に、驚くほどおいしく淹れられるお茶を世に送り出すことで、一坪茶園は今までのお茶のルールや常識みたいなものを変えたいと考えています。

 おいしさは譲れないと言いましたが、実は、焙じ茶などは納得いくものが完成したものの、煎茶はまだ100%納得できるというものが開発できておらず、永井に突き返しているところです(笑)。