わが国では、電波法や放送法により放送会社の外国人等議決権割合は5分の1(20%)を超えてはならないと定められている。放送業者に対する外資規制が行われている理由は、放送が世論に及ぼす影響を考慮した安全保障上の理由による。放送業者に対する外資規制は、わが国だけでなく、アメリカ合衆国でも欧州でも類似の制限が設けられている。

 電波法第5条3項は、認定放送持株会社の欠格事由として、放送法5条1項に定める外国人等の議決権割合が全ての議決権の5分の1を超えないこととしている。

 だが、外国人直接保有比率が、5分の1を超えている企業は、東北新社だけではない。2021年3月26日において、フジ・メディア・ホールディングス、日本テレビホールディングスの外国人直接保有比率はそれぞれ、32.12%、23.77%と、発行済株式総数の5分の1を超えている。

 とはいえ、発行済株式総数は議決権の数とは一致しない。定款で単元株式数を定めている場合は、1単元の株式につき1個の議決権となるが、単元株式数未満の株式(端株)には議決権はない。そして、放送免許の欠格事由では議決権の個数が問題になる。

総務省の通達で変更された
外国人等議決権の計算方法

 だれでも証券会社を通じて上場会社の株式を購入することができる。多くの外国人が上場放送会社の株式を買えば、単元株に付いている議決権も総議決権個数の5分の1を超えてしまい、上場放送会社は何もできない。

 そこで、放送法116条では、外国人等の議決権割合が、全ての議決権の5分の1を超え、欠格事由に該当した場合は、その氏名および住所を株主名簿に記載し、または記録することを拒むことができるとしている。

 なお、外国人等の議決権割合の計算方法は、総務省が2017年9月25日に上場する放送事業会社に出した通達文書により、計算方法が変更されている。

 筆者が総務省と上場放送会社に確認したところ、通達前は、総議決権個数に19.99%を掛けた個数が、外国人等の議決権割合とされていた。例えば、総議決権個数が1万個の場合、1999個(1万×19.99%)が外国人等の議決権割合とされていた。

 しかし、この計算方法では、実際に株主総会で外国人等が行使できる議決権個数が5分の1を超えてしまう。どういうことか、順を追って説明したい。

 放送事業者A社について、総議決権個数が1万個、外国人等が保有する議決権の個数が3000個だったと仮定する。