ヒートショック予防に
水道の蛇口が大事な理由

 それでは、これらの事故を防ぐにはどうすればいいのだろうか。

「ヒートショックを予防する方法でよく知られているのは、脱衣所と浴室を暖房機器やお湯で事前に温めておくことです。そして湯船から出る際は、ゆっくり立ち上がるというのが一番簡単な予防法です。もうひとつは、立ち上がる前にちょっと冷たい水や水道の蛇口など、ヒンヤリするものに触れる。これにより軽く交感神経が刺激され、立ち上がったときの血圧の低下によるふらつきを防ぐことができます」

 一方、熱中症予防のためには、湯船の温度は「41℃以下」、浸かる時間は「10分以内」が目安。加えて、飲酒で酔っ払った状態で湯船に浸かることも避けた方が賢明だ。

「飲酒すると血圧が平常時より下がりやすくなります。また、湯船の中で転んでけがをしたり、眠くなって意識を失ったりする危険も倍増してしまう。もし飲酒後に入浴するなら、シャワーか、かけ湯で我慢しましょう」

 転倒を避けるためには、面倒でも風呂場の掃除はこまめに行うこと。床に付いたせっけんなどの成分は足を滑らせる原因となる。また、浴槽や段差部分に滑り止めテープを貼るのも効果的だという。

 最近、転倒事故の原因として多いのが入浴剤で、ヌルヌルしたものや、溶けにくく底にたまって滑りやすくなるものもある。浴槽を出入りする際には、手すりにつかまるなどの対策をすることが望ましい。

 最後に、もし家族や大切な人が風呂場で倒れてしまった場合の対処法も紹介しておこう。

「湯船で意識を失っている場合は、すぐにお湯の栓を抜いてください。もし寒そうにしていたらバスタオルなどで体を包んであげて、とにかく水の中の状態から早く脱出させること。さらに、救護者が足を滑らせたりする二重事故の恐れがあるので、自分より体の大きい人を無理に浴槽から出そうとしないで、救急車を呼んで助けを待ってください」

 風呂に入ることは血行を促進し、心身の疲労を回復し免疫力も高めるなど、体にとっていいことがたくさんある。入浴のリスク対策をしっかりととった上で、癒やしの時間を楽しんでいただきたい。

(監修/東京都市大学人間科学部教授 早坂信哉氏)

【訂正】記事初出時の記述から下記を訂正しました
3段落目:2020年警視庁発表→2020年警察庁発表
(2021年4月17日9:45 ダイヤモンド編集部)