あくまで一般論ではあるが、こういうときに工場の事故や火災のリスクが高まるのではないか。現場に平時と異なる重い負担がかけられたことで、平時では起こり得ない見落としなどのヒューマンエラーが発生してしまう恐れがあるのだ。

 つまり、最近続発している半導体工場の火災というのは、施設や機器が老朽化していることに加えて、世界的な半導体不足で急激に現場に負荷がかかったことが重なって起きた「不幸なアクシデント」という可能性もあるのではないか、という指摘もあるのだ。

安全保障の専門家たちがささやく
「中国犯行説」を全否定できない理由

 一方、サイバーセキュリティや国家安全保障を専門とする人たちからは、耳を疑うような仰天情報も飛び出している。それは「中国犯行説」である。

 アメリカ政府も公式に言及する「中国からのサイバー攻撃」と同様に、これらの工場にも外部から何かしらの攻撃が加えられたことで、人為的に火災が発生させられたというのだ。

「いやいや、ゴルゴ13の読み過ぎだって」と失笑する方も多いだろうが、米マサチューセッツ工科大学でサイバーセキュリティの研究にあたり、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)などの著書がある国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、すでに外部からのサーバー攻撃によって電力会社のシステムがダウンしたり、核燃料施設で爆発が起こったりしているというのだ。

 と聞くと、「中国がハイテク覇権争いで競い合っているのはアメリカなどの国なのだから、わざわざ日本の半導体工場を攻撃するメリットなんかないだろ」というご指摘もあるだろう。

 確かに、かつて世界シェアの半分を占めていた日の丸半導体も、現在は数%までシェアを落としている。ドイツやアメリカの半導体の足を引っ張るというのならいざ知らず、放っておいても弱っていく者をわざわざ攻撃するわけがない、というご指摘はごもっともだ。

 が、それでも筆者の頭の中では、この「中国犯行説」を全否定できない部分がある。ルネサスなどの火災によって、今、中国が喉から手が出るほど欲しいということで、多方面からプレッシャーを与えている「あの国」がピンチに追いやられているからだ。