セブン&アイ・ホールディングス(HD)は2021年2月期通期決算説明会を、米国での大型買収が完了していないことを理由に先送りした。イトーヨーカ堂は一定の店舗リストラが進んだが、百貨店のそごう・西武は首都圏の大型店舗が大打撃を受け、“カリスマ”肝いりの事業にも黄信号がともる。これらに対する説明は今後、十分に尽くされるのだろうか。(流通ジャーナリスト 八神啓太)
決算説明資料は19ページで“質素”な仕上がり
国内の課題の説明を「米国案件」で回避?
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は4月8日、2021年3月期通期決算を発表したが、ホームページで決算短信などを掲載しただけだった。
理由として同社は、昨年発表した米マラソン・ペトロリアム社傘下のガソリンスタンド「スピードウェイ」の買収につき、日本の公正取引委員会に当たる米連邦取引委員会の審査手続きが遅れており、今期の業績見通しなどが定まっていないことを挙げた。
とはいえ、米国の買収とは無関係に、国内のさまざまな事業で課題が山積している。
国内コンビニの加盟店をめぐっては昨年9月、公正取引委員会が、傘下のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)以外も対象とした実態調査の結果を公表し、24時間営業や仕入れの事実上の強制という実態があぶり出された。総合スーパー・イトーヨーカ堂の店舗リストラや、後述するように、コロナ禍で大打撃を受けているそごう・西武の再建も焦眉(しょうび)の急だ。
セブン&アイ・HDの4月2日のプレスリリースには、米国の件を挙げ「本件取引が完了した際には、本件取引の概要および新中期経営計画ならびに 2022年2月期の連結業績予想と配当予想について、速やかに開示し、併せて説明会の開催も予定しております」と記されている。
いずれ開くとしている説明会の内容がもし、米国の「買収完了」のアピール一色になれば、それを意図したとまでは言わないが、国内の深刻な課題への説明が手薄になる。
4月8日に公表された決算説明資料も、大変“質素”なものだった。
20年2月期は51ページ、21年2月期第1四半期は43ページ、第2四半期は39ページ、第3四半期も39ページにわたるが、通期はわずか19ページだ。
内容もまたしかりで、これまでは事業ごとの基本的な決算数値だけでなく、コンビニ加盟店の“支援策”など、期中に実施した施策、今期に実施する施策を詳しく記載。決算短信や補足説明資料には書かれていない、事業の現場に踏み込んだ記述にあふれていたが、今回はそれが、まるでない。決算短信などに出ている数字を表やグラフにし、ビジュアルを変えただけなのだ。