『逆境経営 山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』Photo:PIXTA

ダイヤモンド・プレミアム(有料会員)ならダイヤモンド社のベストセラーが電子ブックでお読みになれます!月ごとに厳選して提供されるダイヤモンド社の話題の書籍から、ここでは一部を抜粋して無料記事としてお届けします。全体をお読みになりたい方はぜひダイヤモンド・プレミアム(有料会員)にご登録ください!今回、2021年5月に提供を開始するのは『逆境経営 山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』。本書が発売された2014年1月は、まさに獺祭が急成長を迎えようと知るタイミング。伝統産業にあって変わることを恐れず、型破りな経営改革を可能にした、旭酒造・桜井博志社長(現会長)の合理的思考法と熱い信念が詰まった1冊です!

はじめに

 突然ですが、このお酒の名前をご存じでしょうか。

〈獺祭〉

 最近では、意外にも多くの方が答えてくださいます。

「“だっさい”ですよね」

 私が社長を務める旭酒造は、山口県の山奥にある酒蔵です。今では、旭酒造という社名よりも、〈獺祭(だっさい)〉という銘柄のほうが知られている、小さな会社です。

 この〈獺祭〉という酒は、テレビCMも流していませんし、量販店やコンビニエンスストアといった一般になじみの深い酒販業態ともほとんどお付き合いがありません。ただ、東京の料理屋さんや飲み屋さんあたりで飲まれたことのある方が増えて、難しい漢字の商品名ですが(私たちの酒蔵の所在地である、獺越〈おそごえ〉の地名にヒントを得ました)、期待する以上にみなさん「だっさい」と読んでくださいます。

 実は2013年、〈獺祭〉の出荷数量は1万1400石(※1)と、純米大吟醸という酒別で全国トップとなり、おかげさまで今も伸びています。

 私たちがお出ししているお酒の銘柄はただひとつ、この〈獺祭〉しかありません。