生物学でもっとも有名なアイデア

 ダーウィンは進化という考え方を裏づける観測結果を貪欲に集め、進化が働く方法を説明する、自然淘汰という美しいメカニズムを考え出した。彼は一八五九年に出版した『種の起源』ですべてを明らかにした。生物学のあらゆる素晴らしいアイデアの中でも、おそらくこれが、(いちばんよく理解されているとは言えないまでも)いちばん有名だろう。

 生命が時間とともに進化することを示唆したのは、ダーウィンが初めてではない。彼が『種の起源』で触れているように、アリストテレスは動物の身体の部位が、長い期間をかけて出現したり消失したりすると主張していた。

 一八世紀後半、フランスの科学者ジャン=バティスト・ラマルクはこれをさらに一歩進め、異なる種同士が類縁という鎖で結ばれていると主張した。種は適応という過程を通して、徐々に、環境の変化や自らの習性の変化に反応して姿を変えてゆくのではないかと彼は提案したのだ。

 有名な話だが、キリンの首が長くなったのは、どの世代も、木の高いところにある葉っぱに届きたくて首を上に伸ばしたのが原因だそうだ。どういうわけか、その奮闘の結果が子孫に伝わり、ちょっとずつ首が長くなっていったのだと、彼は主張した。

 ラマルクの考えは、進化の過程の詳細を正しく理解していなかったため、現代では鼻であしらわれることがあるが、進化の原因には触れていないものの、初めて進化という現象に関して、包括的に説明した一人という意味で、大きな称賛に値する。

(本原稿は、ポール・ナース著『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)

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