遺伝学者、細胞生物学者
細胞周期研究での業績が評価され、2001年にノーベル生理学・医学賞を受賞。1949年英国生まれ。1970年バーミンガム大学を卒業後、1973年イースト・アングリア大学で博士課程修了。エジンバラ大学、サセックス大学、王立がん研究所(ICRF)主任研究員、オックスフォード大学教授、王立協会研究教授を経て、1993~1996年王立がん研究所所長、2003~2011年米ロックフェラー大学学長、2010~2015年王立協会会長、2010年より現職、フランシス・クリック研究所所長。2001年に仏レジオン・ドヌール勲章、2013年にアルベルト・アインシュタイン世界科学賞を受章。世界中の大学から70以上の名誉学位や名誉フェローシップを受賞。首相科学技術顧問。本書が初の一般書となる。
訳者:竹内 薫(たけうち・かおる)
1960年東京生まれ。理学博士、サイエンス作家
東京大学教養学部、理学部卒業、カナダ・マギル大学大学院博士課程修了。小説、エッセイ、翻訳など幅広い分野で活躍している。主な訳書に『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』(ロジャー・ペンローズ著、新潮社)、『奇跡の脳』(ジル・ボルト・テイラー著、新潮文庫)などがある。
これだけ心を打たれた本は、初めてだ――訳者より
ポール・ナースは生物学の世界における巨人である。2001年にノーベル生理学・医学賞も受賞している。
本書を翻訳していて感じたことを書きたいと思う。
驚いたのは、この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版だということ。これだけ科学的な実績があり、2001年にノーベル賞を受賞しているのだから、何冊も本を書いていても不思議ではないが、ロックフェラー大学学長、王立協会(ロイヤル・ソサエティ)会長といった要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない。
これは私の推論にすぎないが、ポール・ナースは、次の世代のため、人類が悲惨な状態に陥らないために、生涯で一冊の一般向け科学書を書いたのではないか。この本はまさに、細胞周期の司会進行役を務めるタンパク質キナーゼと同様、新たな世代への橋渡しの役割を担っている。
私は数々の科学書を翻訳してきたが、これだけ心を打たれた本は、初めてだ。それほど、ポール・ナースという科学者の家族、友人、先輩、同僚、部下、人類、そして生き物への愛情を感じた。
ポール・ナース 著/竹内 薫 訳
定価1870円(本体1700円+税10%)
養老孟司氏(解剖学者、東京大学名誉教授)
「生命とは何か。この疑問はだれでも一度は感じたことがあろう。
本書は現代生物学の知見を十分に踏まえたうえで、その疑問に答えようとする。
現代生物学の入門書、教科書としても使えると思う。」
池谷裕二氏(脳研究者、東京大学教授)
「著名なノーベル賞学者が初めて著した本。
それだけで瞠目すべきだが、初心者から専門家まで読者の間口が広く、期待をはるかに超える充実度だ。誠実にして大胆な生物学譚は、この歴史の中核を担った当事者にしか書けまい。」
更科功氏(生物学者、東京大学総合研究博物館研究事業協力者)
「近代科学四百年の集大成、時代の向こう側まで色褪せない新しい生命論だ。」
ブライアン・コックス(素粒子物理学者 マンチェスター大学教授)
「科学でもっとも重要と思われる問いについて、探究心をもって美しく書かれている。複雑で深淵な問題に、真に深い理解を与えてくれる、稀有な機会に恵まれた。現代生物学の入門書として、これまで読んだ中でベストだ。」
シッダールタ・ムカジー(医師、がん研究者 コロンビア大学准教授)
「この刺激的で生き生きとした本の中で生物学に深く沈潜し、「生命」の5つの本質的な特徴に光をあてている。
すべて驚きと発見にみちていて、いったん読み始めたら止まらない。これから何十年も生物学者にひらめきを与え続けることだろう。」
アリス・ロバーツ(人類学者 バーミンガム大学教授)
「本を読み終えると、生き物の多様性と複雑性と「つながっている」ことに関して、深い驚きの念に打たれる。生物学の最大の難問を扱っていて、私がこれまで読んだ中で、最善の答えが示されている。」