経済と安全保障の両面で
半導体不足に焦る米国

 米国メディアの報道によると、12日のバイデン政権との会合に呼ばれた企業は次の19社とみられる。[1]ゼネラル・モーターズ、[2]フォード・モーター、[3]ステランティス、[4]カミンズ、[5]パッカー、[6]ピストン・グループ(以上、自動車関連)、[7]ノースロップ・グラマン(防衛)、[8]メドトロニック(医療機器)、[9]AT&T(情報通信)、[10]グーグル(ITプラットフォーマー)、[11]デル、[12] HP (以上、PCメーカー) 、[13]インテル、[14]TSMC(台)、[15]サムスン電子(韓)、[16]グローバルファウンドリーズ、[17]スカイウォーター・テクノロジー、[18]NXPセミコンダクターズ(蘭)、[19]マイクロンテクノロジー(以上、半導体メーカー)。

 19社の顔触れを見ると、バイデン大統領が経済と安全保障の両面で、足元の半導体不足に危機感を強めていることが確認できる。その問題を解決するために、同氏は、米国内での半導体生産を増やしたい。半導体の需要者と供給者に分けて会合の内容を考察すると、自動車関連([1]から[6])、防衛([7])、医療([8])、ITサービスや機器([10]~[12])の企業が、インテルなどに増産を要請したというのが一般的な解釈だろう。ただ、事実はより複雑だ。自前での微細化に行き詰まったインテルが、一部のチップの生産をTSMCに委託するとの観測も出てきたからだ。

 総合的に考えると、半導体サミットの狙いの一つは、米国政府が海外企業に“踏み絵”を迫ったことにある。バイデン政権は、TSMCとサムスン電子という世界の2大ファウンドリーに、米国企業の半導体需要を明示し、米国内に追加の工場を建設して需要に応えるよう求めた。特に、TSMCは、最新鋭のステルス戦闘機F35などに用いられる軍用チップを製造している。そのため、台湾海峡の緊迫感が高まる状況は、米軍の即応力に影響を与えるリスクファクターと化している。