ピンポイントおわびからの毅然とした対応が効く

「お前、名前はなんて言うんや。役職と名前を言えや。タダじゃおかんぞ!」

 こうすごまれたら、あなたならどうしますか? 私であれば、まず相手に与えた不快感に“ピンポイントおわび”をし、“ギブアップトーク”のフレーズを使う、という流れで対応します。

 詳しく見ていきましょう。「困りましたねぇ……」、まずはこの一言で自分の焦りをコントロールし、「はい、私は〇〇所属の●●です」と腹を据えて毅然と名乗りましょう。

 業務上であっても、誰しも「個人情報」は言いたくありません。名前や所属を知られたら、きっと良くないことが起こる、と予感しているからです。しかし業務上のトラブルに際して相手に名前を尋ねられ、「言いたくありません」では現状は打破しません(クレーム対応での職員の名前の扱いは、また今後の連載で解説します)。また、名前だけではなく所属まで聞かれたことで、「なぜ、そんなことまで言う必要がある」などと怒りの感情を持つ方もいるでしょう。

 しかし、怒りにのまれては相手の思うツボ。焦りや戸惑いだけではなく、怒りもクレーマーが待っている不用意な一言を誘発してしまうのです。百戦錬磨の“輩”クレーマーは突きどころを熟知しているのですから。

「お前、今“普通の場合”って言うたな。俺は普通の場合ちゃうんか!? ことと次第によっては、人権問題で大ごとやぞ!?」

 このように言葉尻を捉えられ、責められたときには“ピンポイントおわび”を使います。「お客様にご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」と、ピンポイントでおわびをします。

 このとき大事なのは、「起きてしまった事実」ではなく、焦りから発してしまった「不用意な一言」に対してだけ謝罪すること。「突然大声を出され、頭が真っ白になってしまいました」など、冷静に、自分の発言に対してのみ謝罪するのです。