インドを足掛かりに
グローバル展開を構想

 では、I'mbesideyouの動画解析システムは、具体的にどのように活用されているのか。例えばオンライン家庭教師サービス会社では、授業中の生徒の表情や音声を解析することで、どれぐらい集中しているか・楽しんでいるか、「わかった」と言いながら納得のいかない表情をしていないかなど、さまざまな情報を得て授業改善に生かしている。

 また、先生と生徒との相性判定を行い、その生徒にとって合う先生をマッチングしたり、さらには生徒の行動・態度の解析から解約の前兆をつかんで早期に対策を打つといったことも可能だ。教育産業以外でも、営業のセルフトレーニングや受注見込み度の自動化、上司とメンバーの1on1や採用場面などでも活用が進んでいる。

AIによる「感情の見える化」でオンラインコミュニケーションはどう変わる?動画から表情・発言判定・話速・会話ラリー・声のピッチ・感情付ワードクラウド・ダイジェスト動画などを自動生成

 今後の成長が期待されるのはメンタルヘルス分野だ。今年4月からは静岡県浜松市と連携し、動画解析AIで市民のメンタルヘルス状況を観察する取り組みが始まった。蓄積した動画データから心の健康状態を客観的に解析して定期的に本人にフィードバックするなど、状態に応じてアプリのキャラクターがフォローする仕組みの構築を目指す。

「自分自身のうつ傾向に気づかず長い間苦しむケースも少なくないといいます。この取り組みでは、気持ちの落ち込みをAIがいち早く察知してフォローします。医療機関受診が必要になった場合は、医師が長期間ヒアリングしなくても蓄積データ解析結果から状況を把握できるので、素早く必要な治療に入ることができます」

 さらには、グローバル展開も見据えている。その足掛かりに選んだ国はインドだ。世界有数の難関校インド工科大学でインターンシップを募集したところ730人の応募があり、その中から厳選した数人をエンジニアとして採用する。また、世界的に有名なインドの教育者アナンド・クマール氏と提携し、その授業データを基に人を伸ばす手法を解析する計画が進行している。

「アナンドさんの教育は、1つの質問に対して1つの解法を求めるのではなく、物事を多面的に見て多様なアプローチができるようにするのが特長。まさに不確実で不透明な現代に必要な教育です。そんな人の育て方や学び方を、まずは14億人いるインドで作り上げ、それを世界78億人に届けたい。今ものすごくワクワクしています」

 創業1年足らずで世界を視野に急成長するI'mbesideyou。今後も同サービスの展開から目が離せない。

訂正 記事初出時より以下のように表現を改めました。
4段落目:2021年4月時点で国際特許を75件出願するなど→2021年4月時点で国際特許を77件出願するなど(2021年5月6日8:28 ダイヤモンド編集部)

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))