先述の通り筆者は、この東京オートサロンの主催実行委員を長年務めてきたが、東京オートサロンは以前からリアルイベントとしての盛り上がりを見せてきただけに、中止という結果にならずとも、オンラインだけではイベント効果が薄れるとみている。ビジネスメインのBtoBイベントであればまだオンラインでもいいだろうが、BtoCイベントは一般の来場者が訪れてこその盛況であり、リアルでなければ出展の訴求効果も見込めない。

 もっと言えば、東京モーターショーの中止決定は、今夏の東京五輪開催にも影響を与えそうだ。すでに、日本で3度目の緊急事態宣言が発出される中で、その是非に国内外から多くの声が上がっている。そうした微妙な状況にある東京五輪開催を前にして、動員100万人規模の大イベントの先んじた中止の決断は、五輪開催の議論に一石を投じる。

 国内自動車市場は成熟して久しく、昨年もコロナ禍とはいえ新車販売台数は、4年ぶりに500万台を割り込んだ。これまでもコロナ禍で、自動車各社の新車発表イベントは、シティーホテルを会場にしたリアル発表会からオンライン開催に切り替わってしまい、今ひとつ盛り上がりに欠けるものとなっている。国内市場の活性化が急務のところ、コロナ禍がもたらす悪影響は計り知れない。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)

【訂正】記事初出時より、以下のように表現を改めました。
第16段落:主催事務局長が→主催関係者は
(2021年5月13日15:20 ダイヤモンド編集部)