アルケゴスやSBIソーシャルレンディング問題で学ぶ経営判断の「正しい」基準ESG経営ブームの時代も、企業倫理に反する出来事はなくなっていない(写真はイメ―ジです) Photo:PIXTA

ESG経営ブームでも
不正は散見される

 今から20年ほど前、広尾の高級レストランのオーナーであり、筆者のクライアントでもあった方から、人格は500万円ほどのお金で変わる、という話を聞いた。500万円という具体的な金額を確信に満ちて語るオーナーに妙な説得力があったことを覚えている。

 あれから20年近く経った今までに、500万円で人格が変わってしまった人に出会ったことはない。しかし残念ながら、もうちょっと大きなお金や、あるいは目先の利益を追いかけて失敗した出来事は、私の身近で何度か見聞きしてきた。

 拙稿「「ESG/SGDs経営」はブームで終わるのか?旗振り役・ダノンCEO解任の教訓」では、目先の利益よりも長期的な目的を重視するESG経営が注目されつつも、短期的な成果を求めるステークホルダーと軋轢が生じることを紹介した。

 コロナ禍で、これまでの企業活動を見直し、多様なステークホルダーへの配慮を重視するESGやSDGsの流れは不可逆である一方で、目先の利益に囚われて不正に関わったり、適切な業務運営から逸脱したりした結果、足元をすくわれた出来事も散見される。ESG経営ブームの時代も、企業倫理に反する出来事はなくなっていない。