「みんな一緒」は通用しない
今後、多様な人材が必要になる理由
人口ボーナス期(経済成長期)の消費者は「みんなが持っているものが欲しい」と願うが、人口オーナス期に入った社会では、消費者は均一な物に飽きている。倍の金額を出しても欲しいと思ってもらえる商品やサービスを企画開発して提供しなければ、見向きもされない。そうしたイノベーティブな商品やサービスは、同じような年齢・性別の集団で意志決定していては生み出せない。多様な人材がフラッとに議論できるからイノベーションが生まれ、顧客に選ばれる商品やサービスとなっていく。その観点から、なるべく違う条件の人を揃えることが必要になる。そうした多様な人材が意欲高く仕事を続けられる働き方こそが人口オーナス期には必要なのだ。人口ボーナス期に有効だった働き方とは正反対であることが分かる。
人口オーナス期には、多様な働き方の多様な人材が一緒に働くことになる。フルタイムで働ける人、残業までできる人だけでなく、育児や介護のために時短で勤務する人、65歳以上になり再雇用で働く人……働く人たちはそれぞれに、さまざまな事情を抱えている。このようなチームで成果を上げるには、仕事を属人化させず、必要なときにすぐに誰かが引き継げるようにしなければならない。さらに、メンバー間でパスを回すように働ける環境を作るためには、仕事を見える化して共有可能にするITのシステムやサービスが必要だ。

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働き方を変え、生産性を上げるための施策とは?
具体的に、どんな働き方をすればいいのだろうか。小室氏は、自身のコンサルティング経験で活用してきた、働き方を変えるために有効な施策を紹介した。1つ目は「朝メール」「夜メール」だ。朝メールでは、その日1日の業務予定を30分単位で組み立てて提出する。夜メールでは実際の働きと比べてどうだったか振り返るというものだ。始めた当初は朝メールの予定通りに仕事を進められなかったということが多いが、その要因、例えば段取り不足、スキル不足など、自身に起因する要因を振り返って認識することを続けるうちに、自分の業務時間を自律的にコントロールできるようになるという。
もう一つは「カエル会議」だ。これは、無記名で遠慮なく課題や思ったことを書き込んでいくというものだ。書き込みに同意したら「いいね!」と反応することで、同じように思っているメンバーがいることがわかる。ここで、課題の解決策もメンバー全員で考え、無記名で書き込みを出し合う。そして次回のカエル会議までにすべきことと、次回の会議日程を決める。
カエル会議では、リーダーがチームのビジョンを確認する場にもなり、さらに、チームメンバーの良いところを書き出し合うこともある。こうすることで、メンバー一人一人がチームに対する心理的安全性を高めることができる。心理的安全性とは、Googleが生産性の高いチームの共通点を探ったプロジェクトで確認した「このチームの中なら自分の意見を笑われない、拒絶されない、罰されたりしない」という心理状態だ。ちなみにGoogleは、高い生産性を生み出す要因は「有能な人材」「リーダーシップ」などではなく、「心理的安全性が高い」環境が整っていることだったと指摘している。