ドルは中長期的に下落トレンド継続か
緩やかに円高・ドル安が進むだろう
市場の注目を集めた4月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場の予想を大きく下回った。この結果を受け、米長期金利は大幅に低下。為替市場ではドルが主要通貨に対し大きく下落した。
その後、米長期金利は急速に反発し、雇用統計前の水準を上回ったが、ドル反発の動きはごく限定的で、米雇用統計が発表された5月上旬、ドルは主要国通貨の中で最弱の通貨となった。この結果、名目実効レートで見た際のドルは、年初からの上昇分を全て失った形となった。
振り返れば、ドル安トレンドは昨年5月頃から始まり、名目実効レートで見ると昨年末までに約10%下落。その後、今年の1~3月に3%程度反発したが、結局上昇分を4月以降の約1カ月で失い、再び下落トレンドに戻ったようである。今年の1~3月は相対的に円の弱さが目立ったため、ドルと円の関係から見るとわかりづらいが、主要通貨に対するドル安の流れが静かに進行しているのだ。
筆者は、ドルは中長期的に下落トレンドを続けると考えており、それが結果的にはドル円相場の緩やかな下落(円高・ドル安)につながるとみている。以後、ドルを取り巻くファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が大きく悪化しているといえる3つのポイントを踏まえ、ドル安が長らく続きそうな理由を詳述していく。