多くの管理組合が悩まされている大規模修繕積立金の不足問題。大規模修繕にかかるコストが膨大なタワマンにとってはより深刻な問題だ。管理不全・修繕不能になるマンションを減らそうと、国土交通省と業界団体は管理・修繕についての新制度を2022年4月から開始する。特集『タワマン 全内幕』(全14回)の#6では、タワマンの資産評価を大きく変える可能性もある新潮流について取り上げる。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
定年退職後に激上げされる修繕積立金も
タワマンを悩ます積立金不足のわな
「なにこれ。10年後に修繕積立金月6万円?」
2010年。新築間もないタワーマンションであるパークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワーを購入して引っ越したばかりの志村仁さんは、呼び掛けた妻の言葉に青ざめた。
妻が手にしていたのは、デベロッパーから物件契約のときに渡された長期修繕計画書とその積立金の徴収計画書だった。分厚い資料の中には、今は月5000円ずつの支払いの修繕積立金が、5年後に2倍に値上がりし、その後5年刻みで上がっていくという恐怖の計画が記されていたのだ。「……このままいくと30年後の85歳のとき、修繕積立金で月12万円以上支払うことになるじゃないか」
ピカピカのタワマンに胸を躍らせて入居した途端、突き付けられる厳し過ぎる将来――。実はこんなことが志村さんに限らず、さまざまなタワマンで起こっているという。
新築のタワマンを販売するデベロッパーは、修繕計画のことはまず話題にしない。それどころか、通常、タワマンのモデルルームで長期修繕計画と修繕積立金支払い計画を見ることはできない。
計画を初めて確認できるのは、物件を契約する際の重要事項説明の場だ。分厚い書類の読み合わせが行われる中にそっと一緒に入っているものを、その場で精緻に検討し、契約のはんこを押すのをやめる人はそうはいない。結果、タワマンを購入してから最初の管理組合総会で、その実態を把握して青ざめるというわけだ。
「新築のタワマンを販売するデベロッパーが当初作る計画は、月々住民が支払う管理費と修繕積立金の合計金額を抑えるために、スタート時は極端に安い修繕積立金にしているケースがほとんど」と、タワマン管理に詳しい、マンション管理組合理事長勉強会代表のはるぶー氏は指摘する。
その結果、既存のタワマンで実に深刻な事態が起こっている。そして、その事態が22年4月に劇的に動くことが確実となった。それはなぜか。資産価値に大影響のある新潮流を次ページから徹底解説する。