ミステリーのジャンルの中でも、倒叙型の推理ドラマは犯人がどこでミスをするのか、ないしは、犯人のトリックを刑事がどこで見破るのかが山場です。

 第5話だったと思いますが、坂東八十助さん演じる将棋棋士の最高位戦が舞台の回では、殺人を犯してでも将棋に勝ちたかった犯人が、勝利を目前にして、駒が成っていれば勝ちのところを、裏返せずに敗れるシーンがあります。このあたりから作品は『刑事コロンボ』を超えてきて、視聴者として興奮していたことを思い出します。

 それが脚本の妙だとすれば、田村さん演じる古畑任三郎のクセも回を重ねるごとにハマリ役となっていきました。堺正章さん演じる歌舞伎役者とのやりとり、小林稔侍さん演じる大物役者とのつばぜり合い、鹿賀丈史さん演じる外科医との攻防、桃井かおりさん演じるDJとの応酬。

 個性派俳優と呼ばれるそれらゲストたちの怪演を、それを上回る演技で受けて立つ田村正和さん。この構図こそが『古畑任三郎』の魅力であり、視聴者の心をざわつかせた対決感でした。

『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』も…
当時の名作に共通するヒットの法則

 今でもよく覚えているのですが、こうして始まった第1シーズンの視聴率は、それほど振るわなかったことを記憶しています。それで私などもことあるごとに「古畑任三郎はすごい」という話をしていたのですが、同じような行動をとった若者がたくさんいたと見えて、古畑任三郎待望論が徐々に力を持っていきます。