2013年に上場した星野リゾート・リート投資法人が誕生した理由は?そして、7年を経て今、新たな成長モデルによって両者の相乗効果が顕在化しようとしている背景とは?星野リゾート代表・星野佳路さんに立ち上げ当時の狙いと、現状生まれている効果について解説してもらいます。(構成/斎藤哲也)
日本初の観光特化型REIT
本連載の前回記事『星野リゾート代表が語る、日本が外資系ホテルの相次ぐ進出を許した決定的理由』では、星野リゾートが所有と運営を分離し、運営に特化する理由をお伝えしました。端的にいって、「(ホテル旅館等の施設資産の)所有」と「(そのサービスの)運営」ではビジネスの性質が異なるため、それぞれに特化して、投資家の方々との相乗効果を生かすパートナーシップを組むことが重要と考えています。
現在、所有と運営のパートナーシップのあり方の理想を目指している活動が、星野リゾート・リート投資法人(J-REIT)と星野リゾートの関係です。
この「星野リゾート・リート」は、日本で初めて観光に特化した不動産投資信託で、運用会社は星野リゾート・アセットマネジメントという法人で、これは星野リゾートからは独立した経営組織で運営されています。現在、星野リゾートが運営する20施設だけでなく、全国のさまざまな観光宿泊施設を所有し、総資産額は1627億円(2020年12月15日現在)まで成長してきています。
星野リゾート・リート投資法人を立ち上げるきっかけになったのは、08年のリーマンショックでした。この未曽有の金融危機を契機に、世界中の投資家が日本の観光事業への投資に消極的になりました。それが一時的なことであったとしても、業績そのものは好調であったリゾート・温泉旅館などを売却する動きが加速したり、または計画していた施設を改善するための投資が滞ったりすることが起こり、それは星野リゾートにとって深刻な問題だったのです。私たちは観光施設を長期的に安定的に所有できる投資形態を求める必要がありました。
それは、売り買いで成果を上げる形式ではなく、安定的なリターンを享受することを目的とした投資形態であり、行き着いた答えがREITであったのです。観光事業は長期的な視点で競争力を高めていくという姿勢を保つことができると、日々の判断が正しくなるだけでなく、地域にとっても、そこに住む社員にとっても共感を得る環境をつくることができます。「星野リゾート・リート」の上場は、そういう環境を生み出し、結果として競争力ある観光事業を育てていくことを目標としています。