それは、あなたがもっとも良いパフォーマンスを発揮できる場所にいないからです。そして、もっとも良いパフォーマンスを発揮できる場所に自分を置くためには、自分自身のことをきちんと知ることが大事なのです。

 実は僕も大学卒業後、新卒でとあるメーカーに入社し、経理に配属となったのですが、結局仕事が苦痛すぎて何の目標も持てずに、10カ月で辞めてしまいました。

 その後、日系の事務機器メーカーに転職したのですが、今度は営業職となり、これまた仕事が合わずに、またしても1年で辞めようとしたのです。結局そのときは企画職への異動という形で営業から離れることになったのですが、その企画職が僕にはものすごく合っていて、そこでようやく「仕事とは面白いものだったんだ」ということを知りました。

 当時はただ経理や営業は合わないな、苦しいなと思っていただけでしたが、この歳になって改めて今振り返ってみると、自分のスキルや資質に合わない職種に就いて、もがいていたんだなと感じます。

 この経理や営業をしていた頃の僕のように、自分のスキルや資質を知らず、どのような仕事が合うのかを理解できずにいると、ずっと漠然とした不安や不満を抱えたまま、前に進みたいのに、なかなかうまく進めなくなるのです。

 組織心理学者でニューヨーク・タイムズのベストセラー作家でもあるターシャ・ユーリック博士の研究でも、興味深い数字が出ています。

“約95%の人が「自己をよく理解している」と思っていても、実際には10~15%の人しか、きちんとした自己認識ができていないことがわかった。さらに、最終的に「自己認識を高められた人」は、仕事でもプライベートでもパフォーマンスが上がり、より質の高いリーダーシップを発揮できるという結果が出た。”

 結局のところ、自分自身をよく知らずにいると、「自分に何が合っていて、何が合っていないのか」がわからず、最大限のパフォーマンスを発揮できないままその場所に居続けてしまいます。上司からは怒られ、結果につながらず自分に自信が持てなくなってしまう。これが他人の意見に翻弄(ほんろう)される「他人軸」で生きるということです。逆に自己理解ができていれば、「自分に合っていること、合っていないこと」の見極めができるため、「今は大変でも将来は必ず、自分に一番合った場所で最大限の力を発揮するぞ」という「自分軸」の意識が生まれるのです。実力を最大限発揮できる、これこそが「最高の仕事領域(スイート・スポット)」になります。