米国株式は、コロナ禍の2020年に期待主導で無邪気に上がる金融相場の前半戦を享受した。21年の後半戦では、正常化する経済と脱危機対応に向かう政策、株式・金利・為替・商品など各市場の浮沈であつれきが生じやすいと想定した。コロナ克服による経済正常化というマクロは「天気晴朗」、なれど相場は「波高し」。この状況下で投資家が定めるべき視座を提供する。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)
回復過程で生じる需給のミスマッチ
無意味に振れる経済指標
世界経済は新型コロナワクチン接種の進捗に沿って正常化へ向かう過程にある。しかし、「正常化」と言いながら、そのプロセスは相当にデコボコの難路であろうと警戒される。
国際経済を見渡すと、回復を先導する先進国は米英、そして世界第2位の経済大国の中国。続いて、ワクチン接種の遅れが懸念された日欧も、米英に3~6カ月の時間差で追随するだろう。他方、新興国にはワクチンが十分回らず、ひどい感染に悩まされ続ける国が少なくない。
正常化へのこうしたばらつきがあり、いったんストップを余儀なくされたグローバル経済システムが再稼働しようにもきしみがひどい。米英中から欧日へと続く需要回復に対して、生産・供給、そして物流のあちこちで滞りが生じ、需給のミスマッチ、供給不足が想定される。資源・エネルギー価格上昇を含め、過渡的インフレは避けがたいだろう。
大局観として、ワクチンが効かないコロナ変異種のまん延でもない限り、世界経済が回復し、正常化に向かうとの見方は揺るがないだろう。しかし、市場が情勢判断の手掛かりとする経済指標が、このミスマッチによって不自然に振らされて、相場をかく乱する場面が多発する。
市場は、無意味に振れた公表値に反応し、勝手に深読みして動いたりもする。相場が動いた結果を経済指標で事後解釈する論調にもあおられる。投資家として無意味な数字のブレに振り回されない視座が重要なステージだ。