株価はすでに今期の業績回復を織り込んでいる。全体の水準はこれから大きくは上昇しないだろう。しかし、そうした状況下でも買いを集める業種、銘柄は変化する。遅ればせながら日本でもコロナワクチンの接種が進み、景気も回復に向かう。これまで大きく売られた銘柄から業績が回復していく企業が出てくる。(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)
相場のけん引業種の中心が
電機・精密から昨年ダメージを受けた業種に
前回(4月8日)の当欄では、株式市場の上下をどのように推定するのかというフレームワークを示した。
具体的には、株式市場が業績予想と予想PER(株価収益率)に分解されるというフレームワークを使って、予想PERがかなり高いために、業績が堅調であっても3万円付近の日経平均株価の上値の余地は小さいという主張を展開した。
その後、日経平均は伸び悩み、4月中盤を過ぎ、25日には再度の緊急事態宣言が発令されたこともあり一時は2万8991円まで下落した。
今回は、株式市場の物色の変化がどうなるかを考えたい。株式市場ではしばしば指数はボックス圏にとどまるものの、買いが集まる業種が大きく変化することがある。これが物色の変化であり、投資家の目線が上下ではなく左右に動いているときに起こりやすい。
業績予想と予想PERのようにきれいなフレームワーク化はできないが、株式市場を見る場合に欠かすことのできない視点であると考えている。
筆者は現在の日経平均は、指標面で見て相当高い水準にあるので株価全体の水準の上下は当面限られているが、投資家の買い意欲が向かう先は大きく変化すると考えている。
東証17業種の業種別のリターンから今までの物色動向を見ると(下の表参照)、これまでは電機・精密が相場をリードしてきたが、過去6カ月で鉄鋼・非鉄が急速に上昇したことが分かる。