サウジアラムコのシェイバー油田Photo:Bloomberg/gettyimages

原油相場は3月上旬までは、コロナ後の回復を先取りする株式相場などに対する出遅れ感もあり上昇してきた。その後は、欧州での新型コロナウイルス感染再拡大などで下落した。4月以降は、米中の景気回復による需要増加期待で、OPECプラス(石油輸出国機構と非加盟産油国)の減産幅縮小にもかかわらず緩やかに上昇してきた。今後も強弱の材料をこなしながら緩やかに上昇していくと予想される(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)。

3月上旬までの上昇で
原油相場の出遅れ感は解消

 銅が史上最高値を更新するなど国際商品(コモディティー)の上昇が目立つ中、4月の米国の消費者物価が市場予想を上回る上昇率を示し、インフレ懸念が広がっている。

 そうした中、国際商品の中心的存在である原油は速いテンポでの上昇が一服したものの、下値は限定された動きを続けている。

 原油相場は3月8日に欧州北海産のブレント原油が1バレルあたり71.38ドル、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油が67.98ドルの高値をつけた。

 昨年後半以降、各国での新型コロナウイルス感染症への対応を先取りする形で相場が持ち直していた株式などに比べて原油には出遅れ感があり、買いやすさにつながっていた。しかし、3月上旬までの相場上昇で原油の出遅れ感はかなり後退した。

 米国での想定以上のペースでのワクチン接種の進展、想定よりも抑制的なOPECプラスによる原油生産方針、1.9兆ドル規模の米国の経済対策の成立など強気材料も織り込まれた。

 逆に、世界の石油需要は依然としてコロナ前の水準を下回っていることや、原油在庫が増加するなど需給の緩みが意識されるようになっていた。

 相場は頭打ちとなり、3月18日(WTIが7.1%下落、ブレントが6.9%下落)や23日(WTIが6.2%下落、ブレントが5.9%下落)に、大きく下落した。そして3月23日にはブレントで60.27ドル、WTIで57.25ドルの安値をつけた。

 欧州で新型コロナの感染拡大による景気や石油需要の落ち込みが再び懸念され、広く共有されていた経済正常化や石油需給引き締まりが進展するというシナリオに疑念が生じる状況となり、上記の原油相場の急落につながった。