編集者は「女性作家は入っています」と弁明

 ツイッター上でも散々指摘されていたが、これがもし逆に、女性選者6人による少女漫画短編集だったとしたら、どうしたってそのタイトルは「日本短編漫画傑作集・少女漫画編」などとされていたはずである。ちなみに、日本で権威ある賞や作品集の審査員・選者が全員女性だった光景を私はかつて見たことがないが、逆の光景はよく見かける。

 今からでも遅くないから、小学館は「少年・青年漫画編」と付け加えるべきだという指摘がネット上でなされているが、指摘はもっともだと言うほかない。

 さらに、漫画家の近藤ようこ氏が、吉田氏のツイートに対して「そうなんですか。それで『日本』とつけるのはそれはそれで…」と反応していたが、吉田氏は「ともあれ漫画全集の初の試みなので、至らぬ点も多々あるかと思いますが、お許しください。誰かが書いてましたが、これが売れるといろんな展開も考えられますので」「女性作家は入っています。今回の6巻は少年、青年漫画から作品を選んでいるということです」と返答。

 問題のポイントを理解されていないように感じるリプライで、さらに吉田氏を追及しても、批判している人と溝があることは伝わらないように思える。

広報「少年・青年漫画の傑作選と明示することも検討」

 小学館・広報部に吉田氏のツイートについての見解や、どのような段階で少女漫画は入れないことを決定したのかを質問したところ、次のような回答が返ってきた。

「少年漫画誌、青年漫画誌の経験の長い編集者が企画し、選者についてもその人脈でお願いしたため、 今回は少女漫画を対象とすることができませんでしたが、収載している作品は傑作揃いと考えています。女性作家の作品も収載しており、女性差別や多様性を否定する意図は全くございません。また、少女漫画傑作選の刊行についても検討しております。  『少年・青年漫画の傑作選」であることを何らかの形で明示することも考えます」

 何らかのかたちで少年・青年漫画の傑作選であることを明記することも考える、とのことなので、続報を待ちたい。

 ちなみに、ネット上では3巻までに掲載されている作者情報が公開されており、これによれば1巻は10人中10人、2巻は11人中9人、3巻は12人中12人が男性作者である。4巻以降の作者名はまだ公表していないが、複数の女性作家の作品を収載しているとのことだった。

 また、「日本短編漫画傑作集」の制作に携わった人の男女比についての質問には、「正式コメントにもありますように、少年漫画誌、青年漫画誌の経験の長い編集者(男性)が担当しています」とのことだったので、実質的に吉田氏が一人で企画したと考えられる。

 吉田氏の名前で検索すると過去に「吉田保が敬愛する漫画家たち――エキスパートが選ぶインディーズ・カタログ」という記事があり、この中では今回選者となった江口寿史氏、山上たつひこ氏が挙げられていることから、広報発表の通り「選者についてもその人脈でお願いした」というのは事実なのだろう。