「行政のすべてを透明化」、情報公開への高い意識

 今回の変異ウイルス感染急増に対し、台湾政府は短期のうちにQRコードによる濃厚接触者追跡アプリを導入したことは上述したが、さらに、チャットアプリ「LINE」も存分に活用している。新規感染者数や政府発表が日々更新されるのはもちろんのこと、フェイクニュースが流れた場合も、「LINE」上で瞬時にこれを打ち消す機能も持たせた。また、記者会見の様子なども視聴することができる。

台湾「コロナ封じ込め優等生」のプライド、日本とのレベルの違いとは台湾政府はLINEもフル活用する

 根底にあるのは、台湾政府の情報公開に向けた高い意識にある。蔡英文政権で進むデジタル化は、「行政のすべてを透明化する」ことを最終目標に据えている。こうした「透明化」への努力は記者会見にも表れる。

 「衛生福利部の陳時中部長の記者会見は、今でも忘れられません。昨年、コロナ蔓延(まんえん)で市民がパニックになる中で、『時間制限なしで記者の質問にすべて答える』といい、24時間にわたって記者会見を行ったこともあったのです」(李さん)

 コロナ禍を乗り越えるカギは「政府への信頼と市民の団結」にもあることは、アジアの他国の事例でも明らかである。ちなみに、台湾が濃厚接触者追跡アプリを導入する以前は、市民が“マイボールペン”を持参の上で、飲食店などにある店頭の紙に「氏名、時刻、連絡先」を書き込むのがルールだった。当然従わない人も出るが、「周りの目がそれを許さなかった」と李さんは語る。台湾には是々非々でものを言う市民と、それを受け入れる市民が多数存在する。

 現在、台湾では変異株による感染拡大が止まらず、予断を許さない状況が続くが、市民の士気を高めるのは「コロナ封じ込め優等生」としてのプライドだ。「ここで失敗したら世界の笑い者になってしまう」――台湾のコロナ禍が短期で終息したとしたら、そんなプライドの高さも大きく作用したといえるだろう。