「2つのデメリット」に注意!

 第一に費用です。遺言信託の費用は安くありません。銀行にもよりますが、最低でも100万円以上の費用は見ておく必要があります。

 さらに、相続税申告が必要な場合には税理士に支払う費用が、不動産の名義変更が必要な場合には司法書士に払う費用が、別途発生します。遺言信託の報酬の中に、税理士や司法書士費用等も含まれていると誤解している方が多いので注意しましょう。

 第二に、相続発生時に、相続人同士で争いが発生した場合、金融機関は遺言執行者を辞退してしまう可能性があります。法律上、遺言執行者を引き受けるか辞退するかは、遺言執行者に指定された人が自由に決めることができます。

 特定の相続人が自分にとって不利な内容の遺言書があることを知った場合、その相続人は、遺言書についての訴えを起こすときは、相手方の相続人を訴えるのではなく、遺言執行者を訴えることになります。

 そのことから、遺言執行者を積極的に引き受けている金融機関は、訴訟を何件も抱えてしまうリスクがあるため、いざ相続が発生してから、「この相続は揉めそうだな」と判断した場合、早々に遺言執行者を辞退してしまうのです。

 故人の気持ちとしては、信頼して託したわけなので早々に辞退されては困ると思いますが、既に亡くなってしまっている以上、文句は言えません。

 遺言信託をしておけば、金融機関が忙しい相続人の代わりに名義変更を粛々と行ってくれるので、手続き的には非常に楽です。ただ、争いのない相続における遺言執行は、時間とエネルギーはかかりますが、そんなに難しくありません。コストを節約したい人であれば、相続人代表者を遺言執行者として選任しておくのも一つの手ですね。

 遺言信託の契約をするのは、遺言書を残したい本人なので、当然、相続人の同意は必要ありません。遺言書の存在自体を相続人に秘密にすることも一般的です。

 それゆえ、実際の相続の現場では、故人が生前に遺言信託の契約をしていたものの、いざ相続が発生したときに相続人が「余計な費用を払いたくない!」ということで、遺言信託の解約を請求するケースもあります。

 このような事態を防ぐためにも、できれば遺言信託の契約の段階で、相続人にもその旨を共有しておくことをオススメします。

 総じて、遺言信託にはメリットもあればデメリットも存在します。両者を比較し、必要な方は積極的に検討していただくことをオススメします。

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