AKB48も「演歌の戦略」で大ヒット
マーケティングは、「ミュージシャンの戦略」がとても参考になる。
GLAYはどうやってのびてきたか。
シャ乱Q、LUNA SEA、X(現XJAPAN)はどのようにファンを増やしてきたか。
彼らの活躍はそのままマーケティング戦略の教本として使える。
こうしたバンドも基本的に「演歌の戦略」を採用している。
シャ乱Qは大阪城ホール前の路上で活動していた。
路上ライブにきてくれた人と仲よくなる。楽曲だけでなく人間性も含めてファンをつくっていった。
LUNA SEAも、とことんファンを大事にする。
Xもアマチュアのときからライブ終了後、きてくれたお客様を交えて懇親会を開いていた。
こうしてお客様を少しずつ増やしていったのだ。
この様子をじっくり見ていたレコード会社のプロデューサーは、「彼らの曲はよくわからないが、お客様を呼べる。デビューしたらCDは売れる」と考えただろう。
お客様をつかむという点がすごく大事だ。
楽曲だけで勝負しているアーティストは、楽曲の出来不出来にヒットが左右される。
「この曲はよかったが、この曲はよくなかった」というのでは常に不安定だ。
一方、ファンとの関係性を築いているアーティストは常に安定している。
秋元康さんがプロデュースしたAKB48のコンセプトは、「品質と満足度でお客様をつかむ」ことにあったと思われる。
1980年代に秋元さんがプロデュースしたおニャン子クラブは、テレビで流行ったものの、一過性のブームで終わってしまった。
このときに秋元さんは一対多のファンづくりは長続きしないと感じたのではないだろうか?
そこでAKB48は、おニャン子クラブにはないコンセプトにした。
秋元さんはマーケティングの本質が一対一であるとして、ファンを一人ずつつくっていこうとしたのだろう。
だから直接会える劇場をつくった。
一回目の公演のお客様が7人だったという伝説のエピソードがある。
他のスタッフはテレビ業界の人たちなので、「失敗した」と思ったそうだが、秋元さん自身は最初からファンを一人ひとり増やしていく戦略で考えていたので、失敗とは思わなかった。
そのほうが絶対根強いファンができると確信していた。
すると実際、ファンがどんどん増えた。
そして、AKB48の「一対一」を象徴する「握手会」は社会現象となった。
AKB48も「演歌の戦略」なのだ。
そして、一人で同じCDを何十枚、何百枚も買うファンまで現れた。
ここまでくると行きすぎの感もあるが、そこまでしても応援したいという想いを持ったファンが出てきたのは、ある意味強烈である。
「一対一のファンづくり」は絶大な影響力を生み出す。