これによって裁判所は売却命令を出すことが可能な状態となったが、聯合ニュースは「売却命令の時期は決まっていない」と報じている。資産の「差し押さえ命令」については、日本製鉄が昨年、即時抗告し、裁判所での審理が続けられている。

 そうした中で今回の判決では、資産の現金化についても「権利の乱用」だと断じたのである。

 また、文大統領も21年1月の記者会見で、資産の現金化について「韓日関係において望ましくない」と述べている。大統領はこれまで司法府の判断を尊重するといってきた。しかし、そのために日韓関係が破局的状況に陥り、修正を迫られてきたのである。

 今回の判決について韓国外交部の当局者は「関連動向を注目している」「政府としては今後も司法の判決と被害者の権利を尊重し、韓日関係などを考慮しながら両国政府とすべての当事者が受け入れられる合理的な解決策を議論することについて、開かれた立場で日本側と協議を続ける」と述べた。

原告は強く反発
革新系メディアも批判記事

 この判決は原告らにとって青天のへきれきであった。「これが韓国の判事と韓国の裁判所なのか」「不当だ」「ウソをついて恥ずかしいとも思わない日本の肩を持つことはあり得ない」などと強く反発しており、控訴の方針を明らかにした。

 革新系メディアのハンギョレは「日本企業の賠償責任を認めた大法院全員合議体の判決と真っ向から反する上、荒唐無稽な論理を結びつけた異例の判決」とし、上級審で速やかに正されるべきだと批判した。さらに同紙は「大法院が3年前に確立した法理を下級審が新しくもない論理で否定したということだ」と断じた。

 また、共同通信は、上級審で覆る可能性もあると指摘、18年の大法院判決に基づく日本企業の資産売却手続きが進んでいることから、日韓関係改善につながる可能性は高くないとの見方を紹介している。