ジェネリック普及の立役者が語る、これからの日本に「家庭医」が必要な理由武藤正樹医師。日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事を務めるジェネリック医薬品普及の立役者だ

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第40回。ジェネリック医薬品(後発医薬品)普及の立役者である武藤正樹医師が、超高齢化社会を迎える日本に必要な医療の形を語った。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

1997年のアジア通貨危機で
ジェネリックの価値を痛感

 今や特許が切れた処方薬の約8割がジェネリック医薬品(後発医薬品)に置き換えられていることを、何割の国民が認識しているだろう。

 ジェネリック医薬品とは、新薬の特許が切れた後に新薬と同じ有効成分で作られる安価な後発品を指す。国は2015年6月、高止まりする医療費の抑制を目的に、「2017年央に70%以上、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上」とジェネリック医薬品普及目標を設定した。結果、2020年9月時点でジェネリック使用率は78.3%。目標達成とはならなかったものの、13年同期の使用率が47.3%だったことを考えれば大躍進といえる。

 昨年12月に発覚した爪水虫薬のジェネリックに睡眠薬が混入していた事件をきっかけに、ジェネリックへの逆風は強まっている感があるが、「低い医療費で、質の高い医療に、容易にアクセスできる」日本の優れた医療制度を将来にわたって持続させるには、ジェネリック医薬品の普及は待ったなしの課題といえる。