海外でイベントができるのはワクチン効果だけじゃない

 現在、「尾身の乱」で注目を集める新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が5月7日、会見でこんなことをおっしゃった。

 増加の兆しがでてきた変異株の監視対策の一環として、安価な抗原検査キットを活用して、コロナの症状がないような人でも検査を積極的におこなうべきだ――。

 これによって、無症状の感染者が会社に出勤したり、繁華街を出歩いたりしてクラスターを引き起こすような事態が防げるという。

 ただ、これはなにも尾身会長オリジナルのアイディアではない。欧米ではとっくの昔に「抗原検査キットの活用」は始まっていて、ワクチン同様に日本は周回遅れ。特に欧州では活用どころか、「無料配布」という段階まできている。

 例えば、ワクチン接種が日本よりも進み、新規感染者数も少ないイギリスでは、学校に通う子どもたちとその家族、仕事のため外出する必要のある人を対象に抗原検査を提供し、4月9日からはイングランドの全ての市民が、週2回のウイルス検査を無償で受けられるようにした、とBBCニュース(4月5日)が報じている。また、フランスやドイツでも、医療機関や薬局に行くと、短時間で結果がわかる抗原検査キットが無料でもらえる。オーストリアでもすでに3月から15歳以上の国民に、この抗原検査キットが薬局で無償配布されているとニューズウィーク(5月15日)が紹介している。

 そして注目すべきは、この抗原検査キットは経済活動再開にも大いに役立てられているという点だ。

 みなさんはゴルフのマスターズやテニスの全豪オープンなどをテレビ中継で観戦して、なぜあんなに海外のスポーツイベントは観客を入れているのか、と不思議に思わなかったか。

「欧米では日本よりワクチンが進んでいるから」と思うかもしれないが、それだけでない。観客は観戦チケットについた無料の抗原検査キットで自分が感染しているか否かを入場前に自分で簡易的にチェックして、陰性だったら入場できるという仕組みなのだ。体温チェックよりもはるかに信頼性が高く、徹底的に無症状の感染者を施設内に入れないことで、「観客を入れた大規模イベント」が実現できている。