近年、中学受験では「大学付属校」人気が高まり、激戦となっています。2021年入試でも、大学付属校の難化傾向が目立ちました。そんな中で「早慶GMARCH」「関関同立」をはじめとする、人気の「付属中学」の合格を勝ち取るにはどうすればいいのでしょうか?
「御三家をはじめとする進学校と同じ対策をしていてはダメ」というのは、「中学受験 大学付属校合格バイブル」の著者で、早慶をはじめとする大学付属校専門の中学受験塾を経営されている野田英夫氏。実は大学付属校の入試問題には、基本的な問題が多く進学校のような難問が少ないので、付属校に特化した対策をすれば偏差値が足りていない子でも逆転合格がかないやすいのです。
発売即重版となった本書から、知られざる付属校受験の実態や、合格のためのノウハウの一部をお伝えしていきます。

【大学付属校の中学受験】難関進学校の逆転合格は不可能でも大学付属校ならありえる理由Photo: Adobe Stock

対策さえすれば勉強時間が少なくても逆転できる

 付属校の入試は、「対策すれば、得点できる」。これに尽きると思います。

 私は各学校の入試説明会に参加しますが、付属校では、「まずは過去問をきちんとやってください」という話をよく聞きます。傾向や難易度を大きく変えるという話も、めったにありません。前項でも説明した通り、付属校の場合は基本的に出題傾向に大きな変更がないのです。

 模試で偏差値が届いていなくても、反復練習によって合格が可能なのはそのためです。さらに、過去問との相性がよければ、偏差値が10ぐらい足りなくても受かります。

 有名なクラブチームに所属し、本格的にサッカーをしている生徒がいました。高校、大学受験でサッカーを中断したくないということで付属校狙い。とにかく毎日練習があるので、なかなか勉強の時間がとれませんでした。なんとか多くの学校に合格させてあげたいと思ったものの、時間がないので、問題の対策が十分にできたのは1校だけでした。同じような偏差値帯の学校もいくつか受けたのですが、合格したのは過去問対策ができた立教新座のみ。それでも、「これで思い切りサッカーができる!」と、生徒は笑顔を見せてくれました。お母さんも「模試の偏差値よりずいぶん上の学校に決まってよかったです」と言ってくださいました。付属校はその学校に向けての対策ができれば、このように勉強時間が十分にとれなくても逆転合格ができるのです。

残念ながら御三家の逆転合格はほぼ無理!

 御三家は特に、完成された子を求めていますから、ちょっと対策をしたからといって受かるものではありません。本書では実際に麻布の社会(2020年)の問題と慶應普通部の問題を並べて紹介していますが、「普通の子」が解答できるのは、慶應の問題のはずです。一方の麻布の問題は、「これ、大学入試の問題?」と思われた方も多いのではないでしょうか(笑)。中学入試の問題です。

 麻布のような問題は、対策が困難であるばかりでなく、対策したからといってだれもが解ける問題ではありません。基本的な歴史や地理、公民の知識をベースとして、世の中の動向に目を向け、問題点や解決策を見つけ出すことができなければなりません。さらに、限られた時間の中で自分の意見をまとめ、文字数の制限に沿って相手に伝わるように解答しなければなりません。

 このような問題を中学入試で解答できる子、つまり難関大学の入試に対応できる素地を持っている子をふるいにかけているのです。誤解を恐れずに言えば、こんな問題は「普通の子」ではなかなか解けません。

 もしあなたのお子さんが、早熟な子ではなくて、入試まで残り丸2年もない状態であれば、難関進学校への逆転合格は難しいと考えたほうが妥当です。しかし、付属校であれば、対策さえすれば、10以上偏差値の高い学校への逆転合格も可能なのです。