格言の固さとダジャレの
ちゃかし感を意識して

 遠回りダジャレは文章向きと前回書きましたが、ことわざ、格言ともかなり相性がいい。

「新入社員諸君! 社会人となったいま、人脈の大切さを肝に銘じてほしい! 人との出会いは市毛良枝…いや、一期一会と言うだろう」

 王道のお説教、こんな系もまた。

「なに? まったく新規の企画が思い浮かびませんだと? まずな、自分の周りにある情報を見極めて新しい企画を考えてみなさい。灯台もと冬樹…いや、もと暗しということなんだよ、まったく」

 ごもっともです。似たラインの格言では。

「君たちは経験が浅いから仕方ないが、視野が狭くならないように、もっと全体を意識して物事を進めてくれないとな。木を見て森尾由美…いや、森を見ずだ」

 いかがでしょう。なんというか独特のひざかっくん感。普段はうざく感じるエライ人の御託宣もこれで、そこはかとなく、かわいく思えたりしませんか。しないかもしれませんが……、とにかくその理由一つ目は、イメージのユニクロ……いや、H&M……いや、ギャップにあります。格言の固さとダジャレのちゃかし感。

 理由二つ目として、格言は、後ろに向かうにしたがって強く言い切るから。そこにイメージのギャップがあるからさらに生きてくるのです。強烈なスパイクがくるからレシーブするぞと力入れて構えていたら、フェイントを落とされたようなテイですね。

 ここらあたりを肌身で感じて頂けるようおさらいに、もう少し例をあげましょう。

「上期において、我が部署の営業利益はたいへん良かったわけだが、下期に入ってがくっと落ちたりしないように、気が緩めずにがんばりましょう! 勝って兜の大島優子……いや、緒を締めよ」

 前回、文章においての三段モノを多く紹介しましたが、会話中はこのような二段モノが一般的にはクイックリーで実用性は高いので、無理せずこのあたりから入門をオススメします。