財政状況の悪化に見舞われ、近年にない厳しい年度末を迎えた自治体が全国に多数、存在する。2008年度から新たな財政指標が適用され、財政状況の透明化が図られる。その前段階として不適切な会計処理の是正が進み、隠されていた負債が表面化しつつある。いわば第2の夕張市のあぶり出しである。財政危機に直面する東西2つの町の年度末をレポートする。
「経過措置がなかったら、町は財政再生団体となっている。3年間でなんとかして赤字を解消しなければいけない」
頬を紅潮させて語るのは、青森県大鰐町の二川原和男町長。町議会で2008年度予算案が否決され、議員提出の修正案が可決された3月17日のことだ。議会が修正削除したのは、スキー場を運営する町の第三セクター「大鰐地域総合開発(OSK)」への貸付金とそこからの元利収入2億3400万円など。
大鰐町は人口約1万2000人で、標準財政規模約35億円の小規模自治体だ。バブル期に手がけた三セクによるリゾート開発に失敗し、巨額の負債を抱える。三セクの借入金に町が損失補償していたからだ。1997年に債権者(北海道東北開発公庫など3機関)と協議し、リゾート施設を町が譲り受け、運営をOSKに委託。そのうえで町は、30年間、毎年約3億円ずつ損失補償分を金融機関に返済するという協定を結んだ。
だが、その後も事業は好転せず、OSKは運転資金にも事欠くありさま。町の貸付金で営業を続けたが、2001年度からその返済すら滞る事態に陥った。困り果てた町はやむなく禁じ手を使い始めた。前年度決算を締める出納整理期間(4月~5月末)に、新年度予算でOSKへの新たな貸付金を計上し、前年度内に返済されたように処理していた。北海道夕張市と同様、問題解決を先送りにする不適切な会計処理である。
実際、1999年度に2500万円で始まった町のOSKへの貸付金は毎年度同じ程度支出され、その残高は2億3400万円にふくらんだ。町はこれが返済されるとして毎年度、歳入に組み込んで予算編成していた。現実には返ってくる見込みのない幻のカネである。
経過措置がなければ
財政再生団体に転落
総務省から不適切な会計処理の是正を求められた大鰐町は彌縫策を思いつき、3月議会で07年度補正予算案に盛り込ませた。OSKが町に返済するカネを金融機関から借り入れるが、町が損失補償する策だ。しかし、町議会は「つじつま合わせはやめて赤字をきちんと表に出すべきだ」(内海繁勝町議)と、これを否決。08年度予算案も修正案可決となった。