2022年、高校で必修化される『地理総合』。
防災教育としての地理が見直されている

──2022年度より高校では「地理総合」が必修化されますね。地理の重要性が見直されている表れでもあると思うのですが、どういった狙いがあるのでしょうか?

宮路:地理を学ぶとは、私たちがどんなところに住んでいるのかを知ることでもあります。私はよく生徒たちに言うんですが、47都道府県のなかで温泉の源泉が存在するランキングを見ると、じつは東京は上位にランクするんです。

 すると、みんな「東京に温泉が多いなんて意外だ!」と言うのですが、それは発想が逆で、「そういう土地に、東京という都市を作った」わけです。もちろん、東京都に属する伊豆・小笠原諸島に火山が多いという点が大きい要因ではあります。

 自然災害に対する防災という観点でも、私たちがどういう場所に町を作って、暮らしているのかを知ることが大前提となってきます。

 たとえば、荒川は文字通り「荒ぶる川」と書かれているわけで、その近くで安全に暮らすことは相当な努力が必要なわけです。

──なるほど。「地名」を見ていくのも面白そうですね!

宮路:もちろんさまざまな技術が発展して、そこに暮らすことができるようになっているのも事実ですが、地理的に見れば、大雨が降ったり、地震が起きたりしたらたいへんな目に遭うかもしれないということは、常に頭に入れておかなければなりません。

 そのために、どんな備えが必要なのか。そのときに絶対必要なのが地理の知識や地理的視点です。高校で必修科目になる目的の一つはそこにあると思います。

──「防災という観点で地理を学ぶ」というのは、言われてみれば当然ですが、これまで「防災」「教科としての地理」の繋がりを意識したことがありませんでした。でも、災害の多い日本において、地理を学ぶことは特に大切ですね。

宮路:それはすごく思います。活断層がどこにあって、どんな地震が起こりそうなのか。そんないろんな情報をマッピングして一目瞭然にしておけば、ハザードマップができますし、今後の指針が立てられるようにもなっていきます。

 それを行政が作るだけでなく、自分たちで調べて作っていく。そういう防災意識はやはり地理学の知識や考え方が前提になっていきます。事実、2022年から必修となる地理総合では「防災教育とGIS」は大きな柱になっているものです。

──GISとは何ですか?