株主総会シーズンが到来したが、企業にとって株主提案などへの対応は手間暇がかかる作業だ。もちろん株主に認められた権利だが、もしも臨時株主総会の招集請求や株主代表訴訟が何度も乱発されたら……。実際にそれが起きているのが、外航海運・倉庫事業の乾汽船だ。その対抗策として同社は23日の株主総会で、筆頭株主のアルファレオホールディングスとその関係者のみを対象にした「特定標的型」の買収防衛策導入を付議する。しかし、それは経営者の保身のみならず、株主の権利剥奪につながらないのか。乾汽船の法務アドバイザーとして買収防衛策を考案した西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士に疑問をぶつけた。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「準有事」に特定の株主をターゲット
本邦初「特定標的型」買収防衛策の中身
――特定標的型の特徴は。
第一は対象を絞っていること。第二は有事になって慌てて導入するのではなく、有事に至る前の「準有事」の段階から対応すること。この二つを兼ね備えた買収防衛策は本邦初となる。そして三つ目の特徴が、濫用(らんよう)的な株主権行使に対しても牽制力を効かせるということだ。
――「濫用的な株主権行使」とは。
短期間に何度も臨時株主総会の開催を要求したり、取締役や監査役の解任訴訟や会計帳簿閲覧謄写請求を乱発したりしている。普通はここまで無茶(むちゃ)をしない。
――しかしそれは、株主に認められた権利です。
もちろん法律上の権利はある。しかしだからといって、会社は何も手出しができないのかという根源的な問題だと思う。