本題に入る前にJR東海の在来線事業について振り返っておく必要があるだろう。JR東海といえば東海道新幹線というイメージが強い。事実、同社の売り上げの9割以上が東海道新幹線によるものであるが、総延長552.6キロの新幹線に対し、約2.5倍となる1418.2キロの在来線を運行している。

 JR東海にとって在来線は新幹線のオマケではない。舟橋さんが「中央本線、高山本線、紀勢線などには沿線観光地が多く、新幹線からの乗り継ぎを含めて多くの利用者がいます。在来線は通勤、観光、出張など重要な役割を担っており、大変ですがやりがいを感じています」と語るように、在来線は数の上からだけでは測れない重要な役割を担っている。

 しかし一方で舟橋さんが「大変」と語るのは、同社の在来線は中央本線や飯田線、高山本線など、中部地方を縦断する山間路線が多いため、降雨による河川氾濫や土砂災害の被害を受けやすいからだ。そのためJR東海は発足後、在来線の防災対策に力を入れてきた。

 舟橋さんは「雨だけではなく1996年には落石で列車が脱線する事故が発生するなど、昔から災害には悩まされてきました。そのため、在来線土木部門は防災が非常に重要な業務になっており、投資額も大きくなっています」と振り返る。