2年をかけて
基準値を技術的に検証

 降雨運転規制とは、大雨により土砂災害が発生する可能性が高まったと判断されたとき、災害が発生する前に運転を取りやめることで安全を確保する極めて重要な規制だ。JR東海は沿線に平均9キロ間隔で設置した雨量計の数値に基づいて規制を行っていた。

 ところが、近年の局所的な短時間集中豪雨は雨量計の間隔をすり抜けてしまい、十分に捕捉できないという問題があった。そこで2020年6月から全線区に気象庁のレーダ雨量情報を運転規制に取り入れ、沿線雨量計のないエリアでも降雨量を面的に把握することができるようになった。

 もうひとつは降雨運転規制で用いられてきた基準の見直しである。国鉄時代の1972年に制定された従来の運転規制は、過去1時間に降った降雨量である「時雨量」と、降り始めからの単純な累積値である「連続雨量」で判断していたが、連続雨量には大きな欠点があった。

「連続雨量の基準値は国鉄時代(1958~1971年)に発生した災害を踏まえて統計的に設定していましたが、連続雨量は12時間降雨がなかった場合は0ミリにリセットされることになっていたため、先行降雨を十分に評価できない場合がありました」

 そこで連続雨量に代わり、気象庁が土砂災害警戒情報などに用いているモデル「土壌雨量指数」と同じ計算式を用い、降水量から土中に貯留されている水分を推定する「土壌雨量」という概念を導入し、土砂災害の発生危険度を把握することにしたのだ。

 ただ、確立されたモデルはあっても実際の基準値に落とし込むのが難所だったという。

「基準値を下げれば下げるほど列車が止まりやすくなり、高い値にすると災害発生時に列車が止まっていないことになってしまいます。今までの連続雨量は長い歴史の経験則がありましたが、新しい基準を決めるのにはマンパワーが必要でした」

 そのため新規制の基準値は2018年から2年間、社外有識者を交えた在来線降雨規制検討委員会を立ち上げ、技術的な検証を行った上で導入されたという。