コロナショックが「自動車7社体制」を崩す引き金となるかもしれない。中国発で始まった販売台数の「激減ドミノ」は欧米や日本など主力市場へ波及し、自動車メーカーは大ピンチの状況にある。『日本企業 緊急事態宣言』の#7では、自動車メーカー7社の「財務力格差」がもたらす優勝劣敗の構図を明らかにした。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
自動車メーカー経理部門を襲う
通期決算の遅延リスク
例年ならばゴールデンウィークが明けた後の1週間は、自動車メーカーの「通期決算発表の集中週間」となる。だが今年は、効力が5月6日までの緊急事態宣言が解除されていない場合も想定されており、決算発表が予定通り実施できるのかが危ぶまれている。
新型コロナウイルス感染拡大による世界的なロックダウン(都市封鎖)により、グローバルに事業を展開する自動車メーカーの経理部門は悲鳴を上げている。ある自動車メーカー幹部は「日本以上に欧米では厳しい移動制限が発動されており、現地法人のスタッフが出社できないので決算作業が滞っている。もちろん間に合わせる予定だが、決算の遅延リスクもゼロではない」と言う。
自動車業界にとって最も注目される指標は、シンプルに世界の新車販売台数である。中国発で始まった販売台数の「激減ドミノ」は欧州、米国、日本、インドといった世界の主要市場へと波及した。決算作業の進捗はともかくとして、すでに自動車メーカーの経営陣には販売激減という厳しい現実が突きつけられている。
実際に、トヨタ自動車や日産自動車は大手金融機関に巨額のコミットメントライン(融資枠)の設定を要請しているところだ。事業環境が悪化の一途を辿っていることから、資金を厚くしておこうとする両社の目的は一致しているといえるだろう。
ただし、金の出し手となる金融機関側には自動車メーカーを選別する動きも垣間みえる。