それでも輸入開始後は自給率95%前後と圧倒的な国内生産量を確保していたが、当時の木材需要は年間4500万立方メートルほどで、現在の7000万立方メートル超の需要の2/3程度だったため、需要と供給は極めてバランスの良い状態にあった。それが1980年代に入ると、木材の需要はバブル経済に向かう中で年間1億立方メートルと、20年で2倍以上に高まり、需要の高まりに伴って需給率も現在と変わらない30%程度にまで低下している。

 この間、林業に従事する就業者は年々高齢化が進み、山林から計画的に樹木を伐採して木材に加工し消費地へ輸送するという、国内の木材流通ネットワークに明らかな衰えが見え始めている。

 2000年代に入ると木材需要は専ら安価ですぐに住宅建設に利用可能な状態に加工されて入ってくる輸入材に頼ることとなり、2000年当時の木材需要約1億立方メートルに対して自給率はわずか18.2%(約1800万立方メートル)にまで縮小している。

 その後、建築業界からの声が高まったことや関係者の尽力もあって、人工林の形成や計画的な植林・伐採による安定的な木材供給が徐々に増え始めたことや合板を製造する業者が国産の間伐材を積極的に利用し始めたため、2015年以降は毎年7000万立方メートル前後の木材需要に対して30%超の自給率を維持できるまでにようやく回復してきたところだった。

 その状況下でのコロナ禍の発生によって海外からの安定的な木材の輸入ルートが一時的に止まり、またいち早く経済活動が回復し始めた海外での需要が高まったことで、今回のウッドショックといわれる木材価格の高騰・急騰が始まった。

日本は世界有数の
木材輸入大国

 海外からの輸入木材は、主にアメリカ・カナダからの「米材」が最も多くて15%程度、マレーシアやインドネシア、ベトナムなどのアジア諸国から輸入される「南洋材」も同じく15%程度と多くを占め、次いでヨーロッパ各地から運ばれてくる「欧州材」が約8%、オーストラリア約6%、ロシア約3%(これまで多くを占めていたロシアからの「北洋材」は輸出関税の引き上げによって2008年以降縮小している)などとなっている。

 これを見てもわかる通り、日本は世界有数の“木材輸入大国”であり、世界中から木材を購入しているのだから、世界的に需要が変化すれば影響を受けるのは必至といえる。

「欧州材」を例にとると、2021年3月に3万5000円/立方メートル前後だった原材料としての木材価格は、6月に8万円/立方メートルへと一気に2倍強に跳ね上がり、今後の輸入分については10万円/立方メートルを大きく超えるというから、わずか半年足らずで3倍もしくはそれ以上の驚異的な価格上昇が発生することになる。まさにウッドショックという言葉がぴたりと当てはまる状況だ。