国がこれから成長産業となるであろうと期待を寄せている日本の林業。終戦直後や高度経済成長期に造林された人工林が50年以上たち、利用期を迎えていることが要因だという。しかし、実際のところ課題は山積しており、そううまくいかないのが実態のようだ。著書『絶望の林業』(新泉社)がある森林ジャーナリストの田中淳夫氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)
安くても材質が悪く
売れ残る国産材
農林水産省の調査では、2017(平成29)年の日本の林業産出額は4859億円。そのうち2550億円が木材生産によるものだ。
木材生産額はバブル経済崩壊以降、年々落ち込み、ここ15年ほどは横ばいで推移しているものの、まったく安泰ではない状況に陥っている。ただしその一方、森林・林業白書をはじめとする国の林業政策を見てみると、「林業を成長産業にする」と意気込む言葉が頻出する。はたしてその論拠はどういった点にあるのか。
「日本の林業は、戦中に乱伐した山を戦後大造林したおかげで、国土面積の3分の2が森林となり、その4割が人工林です。苗を植えてから50年以上がたち、木材として使えるほどの高く太く育った木がようやく増えてきて、森林蓄積が増えたのです。国もこのチャンスを逃さないよう、どんどん木を伐採して売っていけば、林業関係者にももっと利益が出ると考えているため、そのように強く打ち出しているのでしょう」(田中淳夫氏、以下同)
国土交通省「平成29年度土地に関する動向」によると、2016(平成28)年時点の日本の森林面積は国土面積3780万ヘクタールの3分の2にあたる約2500万ヘクタールを占め、世界有数の森林国だとされている。
また、森林資源は人工林を中心に、毎年約7000万立方メートル増加し、現在約52億立法メートルもの蓄積があるという。
確かに商品になる木材の量が増えているのは、はっきり数字に表れているが、だからといって、すぐに利益が出るという単純な話ではないと、田中氏は指摘する。
「1990年代前半のバブル経済が崩壊するまでは、国産材に一種のブランド価値があって売れていました。しかしバブル崩壊以降、不景気による木材需要の低迷のほかに、国産材が売れなくなった大きな要因として、住宅の建築様式のニーズが変わった点が挙げられます。和風よりも柱が見えないフローリング中心の洋風の部屋が増えたことで、外材需要が増えていったのです。現在、国産材でも需要が増えているのは、合板用やバイオマス発電の燃料用に使うような価格が安い木材ぐらい。だから、需要量は横ばいでも利益は減っているわけなのです」