レール上を走行する鉄道の性質上、レールを含む軌道の整備は安全に直結する重要な要素である。レールと枕木は締結装置でしっかりと固定されているが、数十トンの重さがある鉄道車両が幾度も通過すると、レールの位置は徐々にずれていく。

 そこで定期的にレールの間隔や高さが正常値の範囲内か確認し、必要があればレールの位置を調整する必要がある。

 富山地方鉄道は事故の4カ月前にあたる2020年3月に事故現場の軌道変位測定を行っており、レールが整備基準値を超えて広がっていることを把握していたが、基準値の超過はわずかであり優先度が低いとして補修は行われていなかった。

 加えて事故現場の複数の締結装置はレールを押さえつけるための板バネが破損していた。締結装置の不良によりレールがしっかりと固定されていなかったことから、走行する電車の車輪がレールを押し付ける力(横圧)によってレールが外側に動き、レールの幅が車輪の間隔よりも広がり、車輪がレールの間に落下する脱線事故が発生したというわけだ。

富山地方鉄道では
過去に2度の脱線事故

 保守作業が遅れた原因について報告書は、同社の規定では整備基準値の超過を確認してから実際に保守作業を行うまでの期限が定められていなかったこと、また整備基準値超過箇所が他にも多く存在しており、他の箇所の保守を優先していたことの2点を指摘している。

 実は富山地方鉄道は、2008年と2012年にも同様の脱線事故を引き起こしている。

 2008年9月30日に富山地方鉄道本線中加積駅構内で発生した脱線事故では、木製の枕木にレールを固定する犬釘と呼ばれる固定具が多数折損しており、列車通過時の横圧によってレールが外側に広がったため、車輪がレールの間に落下した。