小池百合子東京都知事が実質的に率いる都民ファーストの会は、都議会議員選挙で「健闘」と評された。ただ小池知事は体調不良で、自民党や共産党が群雄割拠する中での議会運営は前途多難。小池知事にとって、もういいことは何もない。「落日の小池百合子」はやはり、国政復帰に軸足を移すのだろう。このほど『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)を出版した元都庁幹部としての見立てである。(元東京都選挙管理委員会事務局長 澤 章)
過労を押しての応援で「子分」を救うも
仇敵がうごめく都議会は混乱必至
髪の毛はぼさぼさ、足元もおぼつかない過労状態の小池百合子東京都知事は、それでも今ごろ、さぞ、ほくそ笑んでいることだろう。
7月4日の東京都議会議員選挙では、小池知事が事実上率いる最大会派・都民ファーストの会が事前の予想を覆し、議席数は改選前から14減の31と、最小限の議席減にとどまった。33を獲得した自民党に第1会派の座こそ譲ったものの、これには、選挙戦最終日の3日、病み上がりの身を押して都民ファ候補者の応援に出向いて、「子分たち」の窮地を救ったといえる。
医師から自宅療養を告げられていたのでは?とツッコミたくもなるが、とにかく、「小池人気、いまだ健全」を強く印象づける選挙結果となった。
ただし、今後の都議会運営は混迷を極めること必至である。自民党と公明党で55にとどまり、64の過半数を獲得できず、どの政党も2つ以上の相手と組まない限り、議会で優位な立場を確保することができない。善戦した共産党が19、立憲民主党が15で、この2会派を合わせるとまさに「5すくみ」状態なのである。
小池知事はこれまで、第一党の都民ファと「知事与党」を標榜していた公明党に支えられ、議会のゴタゴタに巻き込まれずに、ある意味好き勝手に都政運営を進めることができた。
しかし、今後はそうはいかない。過半数に届かなかったとはいえ、自民党と、彼らに付いた公明党への配慮を欠かせない。小池知事はまさに、議会運営のフリーハンドを失ったのである。
小池知事が初当選した2016年の知事選で「諸悪の根源」とばかりに標的にされた都議会自民党にしてみれば、あの時の恨みを忘れているはずがない。実際、前回17年の都議選で落選した数名が今回、復権している。
彼らも表向きは“大人の対応”で小池知事と握手を交わすだろうが、腹の底は正反対だ。昔のことは水に流し、都民のために一致協力してがんばりましょう、とはいくまい。隙あらば必ず、小池知事の首を狙って動き出すことだろう。
小池知事が付け込まれても仕方がない点は、すでにある。例えば新型コロナウイルスの感染が広がってからのこの1年半、感染対策の補正予算を短期間で成立させるため、小池知事は「専決処分」を乱発した。