ただ、注意して欲しいのは、周りに流されないことです。「少しでも偏差値の高い学校へ」「みんなより遅れないように」と、他者と娘さんを比べ始めると、焦ります。焦ると正しい判断はできなくなり、何のために勉強させたいのか、進学させたいのかも分からなくなり、将来後悔することになってしまうかもしれません。
孔子は、「異端を攻(おさ)むるは、斯(こ)れ害あるのみ」(為政第二)と言ってます。
「自分にとって正しい、大切なことを学ぶべきであって、その本筋からかけ離れた異端のものを学ぶことは、百害あって一利なし」という意味です。
この孔子の言葉を忘れないようにして、ぜひ勉強を続けてほしいのです。相談者さんの妻は熱心すぎるかもしれませんが、「知識」は人生を生き抜くための武器です。勉強をして損になることは決してありません。娘さんは「塾自体が逃げ場になっている」ということですが、塾など勉強に適した場所での学習は、集中力をそぐものにあふれた家での勉強より効果があるかもしれません。
相談者さんの子ども時代のように「山や川でのびのび遊ぶ」というのもひとつの学びの方法です。地方で育った相談者さんは、きっと自然を体得する力が養われているのでしょう。
『論語』で、孔子は「吾(わ)れ少(わか)くして賤(いや)し。故に鄙事(ひじ)に多能なり」と自分のことを言っています。孔子は、野山を駆けめぐって遊ぶ、官位も、地位もない田舎の家に生まれた人でした。しかし、「だからこそ様々なことを自分でやらなければならず、そのおかげで、いろんなことができるようになった」と言いました。
人の育つ「環境」は異なって当然です。大切な娘さんの個性をいかに生かし、伸ばすかは、親がつくる「環境」によって大きく左右されますから、教育に対する両親の意見の食い違いは、禁物です。地方と都会の二者択一の視点でなく、まずは家族にとっての幸せとはなにか、娘さんにどう成長してほしいのか、将来までを俯瞰して、根本のところを話し合ってください。
【まとめ】
地方にも都会にも教育上のメリットはある。家族にとって、娘さんにとって、なにが大切かを夫婦で話し合おう
※AERA dot.より転載